40days 御沢祭 | ナノ
24days 御沢祭
LOVE! LOVE!!LOVE!!!
11.02.20〜11.03.30までは御沢の日!40本御沢!
御沢も皆も大好きです!




魔法のチカラ



* 大人になった御沢
【リクエスト品】



例えば、だけど。
旅行みたいな特別な環境下だと、普段だったら気にしないようなことが特別に見えたりする。

晴れた空とか、行き交う人だとか、話す内容だとか。
歩くこと、食べること、寝ること1つだって、いつもとは何か違うって感じたりする。変な感覚。
世界全部がいつもと違って特別みたいな。ふわふわな感じ。


「沢村―。落ちんなよー。」
「へーきへーき!!これくらい…よ、っと!」


ぴょんっと勢いをつけて、次の石へ。
…御幸と出かけた温泉街で、風呂上がりに散歩してたら、偶然見つけた小さな川。
川っていうより、少し水が通ってるだけって感じで、深さだって踝くらいしかないようなもんだったけど、そんなのにも何だかテンションが上がって、川に点々とする石にはしゃぐように飛び乗った。

そうしてぴょんぴょん飛び跳ねる俺を呆れたように近くで見てる御幸も、いつもだったら「危ないからやめろ」とかなんとか小言の一つでも言うに決まってんのに、今日はそんなに厳しい注意も無くて、時々声をかけられるくらい。
その声だって、いつもより随分優しい声音で「沢村、」なんて呼ぶから、ちょっと調子が狂うし。

浮かれてるのは俺だけじゃない。そう思えば更に気分が良くなってきて、見えないようにへらりと笑みを浮かべた。
こんな顔、絶対に見せたくねーって思うけど、そんなに遠くにいるわけじゃねぇから、案外見られてるかもしれない。
まぁでもいいか、今日くらい、とやっぱり思ってしまう、旅行の魔力。


「御幸も来ればいーのに。」
「結構です。折角風呂入ったのに、わざわざ汚れに行く物好きなんて、お前くらいだろ。」
「なにおう!」
「ああほら、よそ見すんなって。危ねぇから。」


ぐるっと勢いよく御幸の方に体を向けたら、呆れたように笑ってた御幸に咎められる。
折角の旅行なんだから、楽しいことは全部やらねぇと損じゃんか。勿体ねーの!

思いっきり勢いのまま次の石へ飛び移る。
すると、今までと違って少し濡れて居た石の表面に、つるっと足を取られて、意識より先に体が浮いた。

(やべ…っ!倒れ、…!?)

ぐっと、来るであろう衝撃に備えて、目を瞑る。
やべーよな、絶対痛ぇよ。つーか御幸に絶対怒られる。そっちのが面倒くせー…!!


いろいろと一瞬のうちに考えて、いろいろな絶望が一気に全身を走り抜けたけど、予想した衝撃はなかなか来なかった。
こう言う時ってスローモーションになるっていうけど、ちょっとこれはスロー過ぎるん、じゃ…?


「あれ?」
「あれ、じゃねぇよ。言ってる傍からコケんなっつーの!」
「あれ?御幸?」


なんで?と思ってさっきまで御幸の経ってたところと見たけど、当たり前にそこには御幸の姿はどこにも無くて。(まぁ当たり前だけど。ここにいるし。)
変わりに背中を支える体と、上から覗きこまれる顔が、俺の顔に影を作っていた。


「…誰かさんが調子に乗ってるっぽかったから、心配してみれば予想通り。」
「おお…キャッチャーのカン…!」
「ボール以外で暴投しないで貰えます?」
「はは…はは…!」
「笑いごとじゃねーよ。」


べしっと後ろから思いっきり頭を叩かれて、流石に小さく素直にごめんと謝った。
そしたら、ちょっとだけ笑った御幸が、ぽんぽんと肩を叩く。


「…いーよ、今回は。怪我ねーな?」
「おう。」
「次はねぇから注意しろよ。」
「おう!」
「あと、今夜は頑張って貰うから覚悟しろよ。」
「おう!……え!?」


なんか不穏な言葉が聴こえた気がしたんですが。
にっこり微笑む御幸の有無を言わせないような雰囲気に押し黙る。…よし、帰ったらすぐに寝よう。爆睡しよう。布団万歳。

体を離して、さっきまでとは違ってしっかりと足をつけながら石を渡って、来た道を岸へと戻る。
御幸の背中を追いながら、でもやっぱり今日は小言が少ねぇなぁ、と思ったりして。


(あ、そうだ。)


「御幸。」
「ん?」
「さんきゅ、…な。」


言い忘れてた言葉を呟けば、くるっと振り返った御幸が笑う。


「どーいたしまして。」
でもお前に謝られると調子狂う。


そう言って向けられた意味は、いつも通りのムカツク笑顔、…だったのに。



(あ、あれ?)
(なんだこれ。)


ドキドキと、急に早くなったかと思うと、一度跳ねた心臓が、止まらなくなった。


どきどき。心なしか、きっと、顔も、熱い。



(…旅行の魔法にかけられた…。)



早くしないと置いてくぞーっと、俺を呼ぶ御幸の声に俯いたままで歩き出しながら。
とりあえず火照る顔は、温泉の熱気のせいだと誤魔化すための嘘をつくために息を吸い込んで口を開いた。







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如月さんからのリクエストで、「大人の御沢で温泉旅行」でした。
……あれ…?温泉…どこ…?←こら
この前ちょうどちょっと温泉に行って来たのですが、その際に温泉近くに流れていた川を見て「楽しそうだなぁウフフ!」と思っていたのは私です。(阿呆丸出し)
浴衣でひょっこひょっこ散歩してる御沢は可愛い!…という妄想だったはずが一体どうしてこんなことに…!
あわわ…いつか、いつかこう、温泉らしい温泉を…!リベンジを夢見て…!
如月様、素敵リクエストありがとうございました!大好きです^^!









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