* 御幸×♀沢村 【リクエスト品】 「家族会議しようじゃねぇの、一也サン。」 「えー…。なんだよ、改まって。眉間に皺寄ってんぜ?」 突然そんなことを言い出した栄に、なんだよって言いながらいつも通りなんとなく手を伸ばしたら、思いっきり振り払われて少しだけ驚いた。 軽く肩を竦めて誤魔化せば、キッと力いっぱいこちらを睨んでくる黒い瞳に射止められて(正直可愛いだけだけど。)まるで威嚇する猫のように逆立てられた黒髪をふわふわさせて、こちらを睨む栄が叫ぶ。 「なんだよ、じゃなくて!家族会議だよ、家族会議!!!」 「だって別に議論することもねぇじゃん。」 「俺にはある!!」 バンッと音を立てて座っていたソファから栄が立ち上がると、弾みで隣に座ってた俺の体がぐらりと揺れた。 「まず、その1!!」 「おー?」 「一也は、俺に対する無駄なスキンシップが多すぎる!」 「は?」 「そんな暇があれば、子供たちをもっと可愛がってやれよ!」 まるで言われた意味が分からずぽかんとしていると、聞いてんのか、ともう一度大声を飛ばされた。 まさかそんなことを突然言われるとは思わず、俺はただ首を傾げて凄む栄を見上げるしかない。 「何言ってんの、えーじゅん。」 「言葉通り、です!」 「…なにそれ。俺が、かわいーかわいー娘息子を可愛がってないって言いてぇの?」 「え。」 「だってつまり、そういうことだろ?」 栄の言葉に、少しだけ硬い声を漏らせば、さっきまで栄の周りをふわふわしていた熱が一気に見えなくなった。 「や、そういうわけじゃねぇけどさ…!」 違うくて、と反論する栄に向かって、ふうん、とわざとらしく鼻を鳴らすと、急にしどろもどろになる。 さっきまでの勢いはどこへやら、俺の視線に体を少しだけ震わせて、まるで俺の顔色でも窺うようにチラチラ向けられる視線。 …なんだこの可愛い生き物。 俺を怒らせたのかと不安になったのか、慌てているのが顔に出ている栄に内心でクスリと笑えば、ほんの少し芽が出た悪戯心のまま、ゆっくりと沢村の目を向き直った。 「栄純。」 「お、おおう!?」 「俺に、何か不満でもある?稼ぎが足りねぇ?愛情が足りねぇ?…それとも、知らないうちになんかしちまってる?」 「や…そんなこと…。」 「俺は、旦那としても父親としても頑張ってたつもりだけど、栄には伝わってなかった?」 「そんな…一也はすげぇいい父親やってくれてるし…だ、旦那としても…!」 「本当に?」 問いかけると、コクンと素直に頷く。 いつの間にか俺のペースだってことに気付いてないのか、未だ揺れる漆黒に内心で小さく笑みを浮かべた。 「さっき、スキンシップが多すぎるって言ったよな。」 「う…。」 「俺はさ、お前のことも、子供のことも、目に入れても痛くねぇくらい、愛してんのよ。分かる?だから、お前にも子供に精一杯出来ることしてやりてぇし、普段近くにいれない分、一緒に入れる時はめいっぱい近くにいてやりてぇわけ。」 「で、でも…あんまり…こう、べたべたしてんのは…子供の教育上よろしくないかとですね…!」 一歩、一歩。 少しずつ後ずさって消え入りそうな声で語尾が退化していく栄純に向かって、ゆっくり足を組み直しながら、小さく名前を呼ぶ。 栄純、と。存分に柔らかい声音で囁くように呼びながら、手招きをする。 すると、ぱっと顔を上げた栄が、ちょっと躊躇った後に近寄って来た。そのまま腕をぐいっと引いて、落ちてきた体をしっかりとキャッチ。 「ちょっ、だから、こういうのが!!」 「駄目、って?」 「だって…。」 「あのさ、栄純。俺は何もやましい気持ち100パーセントでこんなことしてるわけじゃねぇんだぜ?」 「う、え…?」 「両親が仲良いとさ、一番安心するのって子供だろ?それに俺は、あいつらには愛情表現が乏しい人間にはなってほしくねぇの。好きなやつには態度で表せる優しい人間になって欲しいわけ。言うならば、これは教育の一環なんだよ。」 「教育…?これが…?」 「そう。…な?だから栄も協力してくれるよな?」 お前はアイツらの母親だろ?と腰に手を伸ばしてぎゅっと抱きしめながら、真っ直ぐその顔を見つめて問いかける。 暫く黙りこんでいた栄が、何かを考えるように視線を揺らしたあと、「そうか…、」とともすれば聞き洩らしてしまいそうなほど小さな声で呟いた。 「そうか…、そうだな、うん、そうだ。」 「分かってくれた?」 「おう…。俺、一也がそんなとこまで考えてくれてたなんて気付かずに…、自分のことしか考えて無かった。変なこと言って、ごめんな。」 「いいんだよ、俺も、ちゃんと言わなくてごめん。これで喧嘩してたら意味ねぇよな。」 「や、俺こそ。ごめん。」 ぎゅっと、栄が少し恥ずかしそうに首に腕を回して、耳元で呟く。 それに頬んで、お返しとばかりに抱きしめる腕に力を込めたら、ふふ、と小さな笑い声が耳を擽った。 「二人で協力して、優しい子に育てようぜ。」 「おう!!」 「…父さんと母さん、いつまでああしてると思う?」 「言っちゃダメよ。いつものことだもの。」 「…母さん、この会話、3日前もしたってこと忘れちゃったのかな。」 「…言っちゃダメよ。母さんだもの。」 「父さんって絶対確信犯だよね。」 「そんなの当たり前じゃない。」 …だって父さんよ? ……ですよねぇ。 ---------------------- 「御沢が夫婦で、子供たちの前でイチャイチャする御幸家のヒトコマ」とのことで、いつも通りただのバカップルの御沢のお話でした…! あわあわ…!い、イチャイチャ…してる…?最後の子供の会話が一番書きたかったとかそんなまさか(ゴホゴホ こう…いつまでも新婚真っ只中な空気嫁!な二人でいいんじゃないかなぁ。とほわほわしつつ。 沢村が「一也」から「パパ」呼びになったら機嫌損ねる御幸とか、「じゃあ夜だけでも一也って呼んで」とか言い出す御幸とか…(もう御幸この野郎(愛)そんな妄想をしつつ! 素敵なリクエストありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたら光栄です…! ありがとうございました!大好きです! [TOP] |