* 同級生パロ 【リクエスト品】 「風邪引くだろ。」 ふわりと後ろから肩に突然温もりを感じた。 それに一瞬驚いたものの、それが見知った温度だと認識すると、胸元に垂らされた腕にそっと手を這わせる。 いつもより少しだけ温かい夜風に運ばれて流れてきた香りは、俺の髪から漂うのと同じ。風呂上がりのシャンプーの香りに包まれて、そっと息を吐きながら笑った。 「…そういう、一也こそ。」 風呂上がりに外に出て来てんじゃねーよ、と言えば、お前だって風呂上がりだろ?と意味深な笑みを浮かべられつつも軽く怒られた。 それを曖昧に笑って流すと、のしっと頭に顎を乗っけられる。それがちょっと重くて振り払おうとすれば、更にしっかりと抱き寄せられた。 昔はそんなに、それこそ体格だって力だって変わらなかったのに(むしろ一也の方が小せぇんじゃねぇの?って時代も確かにあった。)学生時代に離されてしまった差は、大学、社会人と時間を重ねる度に少しずつ広がって言って、今はこうして簡単に一也の腕の中にすっぽり収まってしまう。 それが流れていった時間を体言しているようで、少し…いや、かなりどこかが妙にくすぐったい。 「…誰かさんと入ると長風呂過ぎてのぼせたから覚ましてたんだよ。」 「え?俺のせい?」 「他に誰がいるわけ?」 「だって栄純だって風呂なげぇじゃん。高校の頃とかも…、」 「ああもうそれはいいから!」 冷たい風が通り抜けていく。 けれどひっついているところは温かくて、拗ねたような、怒ったような口ぶりとは逆に体を擦り寄せれば、一也も何も言わずにぎゅっと抱きしめる腕に力を入れてくれる。 会話が、途切れる。 頭上を一也の吐いた白い息が通り抜けていった。静かな、夜だ。 「っていうかさ。」 「ん…?」 「栄純だって、満更でもなかったくせに。」 楽しかっただろ?と言外に含まれた先ほどまでの風呂場でのことを揶揄するような言葉に、少しだけ火照りの冷めた体に一気に熱が上がった。 強張った体が背中越しに伝わったんだろう。一也がクスクス笑う声がして、思わず俯く。 「〜〜っ、一也のくせに!」 「なんだよ、照れてんの?」 「お前…いつからそんなことさらっと言えるようになった…?」 「さぁ?いつからでしょー。」 くすくす。 耳元を擽る楽しそうな笑みを振りはらうように頭を振ると、ぐえって一也の声が降ってきた。 「一也の癖に…生意気だ…。」 それに可愛くない。 「俺だって成長くらいするよ?」 それに可愛くなくて結構。 「しなくていい!!それ以上!」 ぶすっと不満そうな色を顔中にありありと映して、唇を突き出す。 (だって、いつの間にか全部抜かれてたのに、これ以上…とか。なんか、なんかさぁ…!) 「大丈夫。…置いてったりしねぇから。」 まるで俺の心の中を見透かしたみたいな穏やかな声に弾かれるように振り返る。 そのまま掠め取られる、唇。 あ、っと思った時には、夜空の星を映したみたいな瞳に、全部が吸い取られていた。 ちゅ、っと音を立てて離された後、見えた顔は暗くてよくわからなった。 「…やっぱ、一也のくせに…ナマイキ…。」 けれど触れあった背中から、少しだけ早い心臓の音だけは、変わらずしっかりと聞こえた。 静かな夜のことだ。 ---------------- 同級生パロで、恋愛色濃いお話、とのことで、ちょっと御幸に成長して貰ったのですが、結果「どこの御幸さん家の一也君!?」って状況になりました← でも数年後には落ち着いてこんなふうになってる二人も、いいかな、と。 朝同じシャンプーの匂いがすることにドキドキしたり、料理を一緒に挑戦してみたり、洗濯回す係と干す係でじゃんけんしてみたり、以外に高い光熱費に頭を悩ませてみたり、たまには喧嘩して、それでも「ただいま」「おかえり」に毎日嬉しいって思いながら一緒に暮らしてるんじゃないかなーっとか妄想しつつ。 企画へのリクエストありがとうございました! 拙い文章ですが…!たくさんの愛をこめて(⊃∀`* )! [TOP] |