ご主人様とイヌ | ナノ
subspecies
「調子に乗んなよ、バカ犬」
  「ごしゅじんさまのためなら、ば」


御幸様×瞳孔栄純のおはなし。
どM向け仕様の御幸様と
     敗北主義者の瞳孔君。

生みの親*秋人要様

  + 愛らしい御幸様bot、瞳孔栄純bot



(3)あだるてぃしゅがー



*御幸様+御幸





『それ』が何なのか、俺は知らない。
否、認めたくないだけかもしれない。そんなものが、自分の内部に、奥に、巣食っているだなんて、そんな現実を。
俺はもっと、自分は器用な人間だと思っていた。

…あの日までは。
あの日、そう、あの日。

自分の中にある、『それ』に初めて出会ったあの日までは。


「かーずや。」
「…名前で呼ぶなっつーの。つーか、ナチュラルに話かけんな。」
「なんで?いいじゃん別に。」
「寝てる時くらい、素直に寝かせろ。」
「素直に寝かせるわけねーだろ?」
「…。」
「…って、お前がいっつもアイツに言うじゃん。…沢村、にさ。」


頭の中で、『それ』がニヤニヤと笑う気配がして、その気持ち悪さに思わず眉を寄せる。
目に見えないのに、はっきり目に見える。
そんな、普通であれば在り得ない状況に、すっかり慣れてしまった自分に小さくため息をつけば、「何一人憂いぶってみてんの。」と再び笑われた。


「…。」


『それ』には、隠し事なんか通用しない。
プライバシーなんてあったもんじゃない。正直めちゃくちゃ不自由。


「…だから、寝かせろ、頼むから。」
「お前が土下座して頼むんだったら訊いてやってもいーけど。」
「…俺はお前の犬じゃねーつの。」
「まぁ、そうねぇ…。」


『それ』は、まるで俺と同じ顔をして、同じ声で、そして同じ体で。
二重人格、というわけではない。そういうのとはまた違う。変な感覚。

とりあえず、あれだ。

『それ』は、「俺」らしい。

…なんかおかしな日本語だけど、これが唯一の正解で、唯一俺が分かることだった。


「一也は、犬じゃねぇよな。」
「…んだよ、だから寝かせろって。」
「どっちかっつーと、俺のほうが、イヌ?」
「はぁ?」


にやりと笑う。頭の中で。


「なぁ、ごしゅじん?」


何かを彷彿とさせるその物言いに、更に眉の皺を深めた。




04






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