ご主人様とイヌ | ナノ
subspecies
「調子に乗んなよ、バカ犬」
  「ごしゅじんさまのためなら、ば」


御幸様×瞳孔栄純のおはなし。
どM向け仕様の御幸様と
     敗北主義者の瞳孔君。

生みの親*秋人要様

  + 愛らしい御幸様bot、瞳孔栄純bot



(2)みわくのきゃんでぃ



魔女は、ヘンゼルとグレーテルを美味しく食べるその日のために、二人にお菓子の部屋を与えました。
最初こそ恩恵に素直に預かっていた二人でしたが、後に異変に気づいたヘンゼルは、魔女が自分達を食べるために太らせていたことを知るのでした。




「……。」
「珍しく間抜け面が更に間抜けになってるけど、どうした。」
「ごしゅじんさまは、」
「ん?」
「ごしゅじんさまは、いつか俺を食べてしまうんですか?」
「は?」


思ったことをそのまま問いかけたら、予想外に大きい声が返ってきて、ひいっと小さく声が漏れたのを両手で塞ぐ。
そろり、と視線をやったら、ちょっとだけ寄せられた眉毛が見えた。そんな様子におどおどしながら、そっと口を開く。


「だ、だって、俺にたくさんご飯をくださる、から…。」
「飯?」
「そう、です。」


ぎゅっと抱えていた本を差し出せば、タイトルを見た瞬間、ああ、とでも言ったふうにすぐに興味なさそうに逸らされた。


「つまりお前は、俺が魔女みたいだって言いてぇの?」
「…!!ち、違います!」
「はは、いいっていいって。隠すなよ。」
「ごしゅ、」
「…それで?そのあとは、お前は俺に食われたい、っていうお誘い?」
「へ…?」


にやり、と歪められる口に、嫌な予感。


「うまいもん食わせて太らせて、それから食おうって考えてる、って疑って……つーか、結局食われたいんだろ?」
「あわ、わ、」
「…バカにすんなよ。アホ犬。」


くすくす、顔を隠した掌の間から細い笑みが漏れる。
眼鏡の奥のアンバーが、細められて、それで。


「安心しろって。俺はそんなに、我慢強くねェから。」


美味いものを与えて、大切に大切にして、幸せそうに丸まると太るまで手塩にかけて育てるなんて、そんなまどろっこしいこと。
伸びてきた手が、頬を滑る。
言葉も発せられずに黙り込む俺の目を真っ直ぐに射捉えて、笑っては。


「…最初から美味そうなペットしか、そばに置かねぇよ。」


そういったご主人様の顔が近づいてきて、見開いた瞳ごと食べられてしまいそうな口に、そのままパクリと齧られた。



…俺って、おいしいんでしょうか。



03







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