ご主人様とイヌ | ナノ
subspecies
「調子に乗んなよ、バカ犬」
  「ごしゅじんさまのためなら、ば」


御幸様×瞳孔栄純のおはなし。
どM向け仕様の御幸様と
     敗北主義者の瞳孔君。

生みの親*秋人要様

  + 愛らしい御幸様bot、瞳孔栄純bot



(1)はにーとーすと



俺には、だいじな、ごしゅじんさまがいます。
…ごしゅじんさまは、ごしゅじんさまですよ?
ごしゅじんさまは、ちょっとだけ意地悪で…、…結構意地悪で、…意地悪で、…そう、意地悪な人なんです。
でも、行く場所がなくて捨てられた俺のことを拾ってくれた、本当は優しい人。

お腹が空いたら、温かいご飯をくれる。
眠くなったら、柔らかい布団をくれる。
それでたまに、一緒にご飯を食べてくれたり、一緒に寝てくれたりもするんですよ!凄くないですか?


「…お前、ひとりで何喋ってんの?」
「え?」
「…ついに頭でも沸いた?」
「…俺、なんか言ってました?」
「常々、アホ犬だとは思ってたけど、まさか頭までイってるなんて思わなかったなァ。」
「ご、ごめんなさい…?」
「疑問符付けて謝んな、バカ犬。」


アホの上に…バカになってる…。
…もしかして、思ってること全部喋ってたのかな…。
心の中で思ってたと思うんだけど。おかしいなぁ…。それにしてもごしゅじんさま、どこから聞いていらっしゃったんでしょう?


「おい。」
「…。」
「…おい、っつってんのに、聴こえねぇの?」
「ひゃ!」
「…ご主人様を無視するなんて、いい度胸してんなァ?ペットのくせに。」
「は、わわわ…!」


怒ってます。すっごい怒ってますこれ。
慌てて辺りをぐるぐる見回してみたけど、全然何の解決にもならなかった。
冷たくて深い、ご主人様の目が、俺を真っ直ぐ捕える。
…知ってる。俺。この目。
それでこの後、なんて言われるのかも。
ドキドキ、と。心臓のところが変に熱くなった。





「悪い犬には、躾が必要、か?」





ああ、やっぱり。
じわ、っと胸のあたりが熱くなって、ドキドキが止まらなくなった。
じわじわ。じわじわ。
真っ白いキャンパスに、水分を多く含んだ水彩がぽたりと落ちて、滲んで広がっていくみたいな、感覚。
これが何なのかは知らないけど、放っておけばそこから溶けて穴が開いて、なんだか変になってしまいそうだとおもった。


「ごしゅじ、さま…?」
「返事は、はい、か、いいえ、だって教えなかった?」
「う、あ…。」


伸びてきた手が、するりと頬を撫でる。
その柔らかい感触に、思わず反射的に頬を擦り寄せれば、バカにしたような、けれど、なぜか温かさも感じるような笑みが、クスリと頭の上から落ちて来る、そうっと見上げたら、目を見る前に、思いっきり口をその大きな手で塞がれた。


「ん、う!?」
「ほら、また違うこと喋ろうとしたろ?」
「んう!ふ、ふぁ…!」
「なんだよ。言えるの、言えねぇの?」


俺の反応を楽しんでるみたいに、クスクス笑いながら、口を覆う手にぎゅっと力を込める。
圧迫される空気。入って来ない薄い酸素に、自然にじわりと目に涙が浮かんだ。
それを反対の手で拭って、にっこりと微笑む、ごじゅじんさま。


「もう一度聞くけど。」


そう前置きして囁かれる、甘くて重い、おと。



「…俺に躾けて欲しいんだろ?」



まるで、愛の告白みたいな言葉が、体の奥の方にまで届いて、きゅっと縮こまってしまうほどたまらなくなる。
だから俺は、一回だけ大きく首を上から下に揺らして、返事をするために大きく口を開いた。






はい、は一回。
首を縦に一度振るだけ。
それだけで与えられるのは


最高に甘美な ぜいたく




02






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