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どこからか爆発音が聞こえてきた。本日2度目だ。墓地の方角で炎柱が上がる。小さいが白い何かが飛んでいくのも確認できた。おそらく伯爵だろう。頭の中で雷閃が一気に不機嫌になった。彼らはどこまでも混ざり合いそうもない。


《(殺せ、壊せ!)》

「仮にも神の結晶が言うべき台詞じゃないでしょ」

《(オレは武器だ、奴を葬る為の道具だ! みすみす逃すか! 捕らえろ、壊せ!)》

「今の私じゃ無理だよ」


壊せ壊せと頭の中で連呼されるのはキツい。普段私がどれだけ我慢していると思っているのだ。そんなに壊せと言われたら、壊したくなってくる。もっとも、その矛先は人間だが。

雷閃の声を無視し、墓地へ足を運ぶ。着いた頃には彼は鳴りを潜めていた。どうせ私の頭の隅でふて腐れているのだろう。だが現実的に考えてもらいたい。今の私が伯爵に勝てるわけがないし、万が一勝てたとしても、物語がガラリと変わってしまう。変えてはいけないと言ったのは雷閃だというのに。

ジャンはすでに医者を呼びに行ったのか、姿が無かった。墓地の地面に横たわっているアレンの顔色は悪いが、無事そうだ。


「アレン、無事ー?」

「あ、黎音……。アクマと遭遇して……って、どうしたんですかその血!?」

「ああ、だいじょーぶ、返り血。てかアレンのその傷の方がヤバそう」

「……さすがに、痛いです」

「だろーね。つーか伯爵か……」


そんな会話をしていたら、ジャンがもの凄いスピードで医者を連れてきた。返り血が付着していたから、お前がやったんじゃないかとかあらぬ疑いをかけられたりもしたが、三日後に無事アレンは退院。ジャンと別れを告げ、目的地へと向かう。
私たちのホームに。


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