09
[……エクソシスト。イノセンス、オレ、コワス? キレイ、キレイ?]


不意にアクマが呟いた。とても哀しそうで寂しそうで、嬉しそうな声だった。何だこのアクマは。伯爵の玩具となって尚、人間らしいではないか。
阿呆らしいと鼻で笑った。どんなに人間らしかろうが、アクマは所詮アクマ。壊すべきモノだ。情を持ち出す必要はない。


「お望み通り、壊してあげるよ。キミが殺した分、じっくり味わいな」


男の身体が膨れ上がった。下半身はそのままに、上半身だけが大きくなる。腕は少し屈めば地面に届くくらいに長くなり、掌はそれに比例して大きくなる。指と爪は細く伸びた。片手だけで人を掴めてしまいそうだ。


「『一人の男が死んだのさ
  とてもだらしがない男』」


歌いながらアクマに切り掛かる。だが大きな手に難無く防がれてしまった。細長い指が鎌に絡み付いてくる。電気を流し、無理矢理離させた。


「『お墓に入れようとしても
  何処にも指が見つからない』」


電流によって動きが鈍っているアクマの指を落とした。綺麗に指だけをだ。慌てた様子で後退する。だがそれを許す筈がない。


「『頭はごろりとベッドの下に
  手足はバラバラ部屋中に』」


追い縋り、首目掛けて鎌を振るった。しかしまたしても手がそれを阻止する。舌打ちをした。邪魔だ。腕の継ぎ目を薙いだ。どうやら硬いのは表皮だけのようだ。人間でいう肘あたりを、肩あたりを、膝あたりを、足の付け根あたりを切り落とす。これで邪魔はなくなった。
鎌の刃先を首に突き込んだ。そしてそのまま力を込める。硬さに苦戦した割には、あっさりと刃が通った。ごろり、頭が落ちる。


「『散らかりっぱなし出しっぱなし』」


落ちた頭にトドメを。長柄の先で砕いた。最期の最後に浮かべた、苦痛と安堵に満ちた顔が印象的だった。伯爵の玩具でも、人殺しは嫌なのだろうか。その真相は一生わかることはないのだろう。わかりたくもない。


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