06
煉瓦(れんが)作りの建物が建ち並んでいる。さすがヨーロッパ。
私たちはこの辺りの地理に(うと)い。なのでジャンに案内を頼んだら、快く引き受けてくれた。おそらく、ジャン自信の好奇心を満たすためでもあるのだろう。


「オレの親父、ヴァチカンの科学者なの。でもいっつも仕事で留守でー、暇潰しに読んでた親父の研究資料でアクマのこと知ったんだ! いつかオレもすげー科学者になってアクマを一瞬で消すような兵器を造んのが今のところ夢!」


ちょっと待て、何故ジャンの家に研究資料があるんだ。一度教団に入ったが最後、死んで亡骸となった後も帰ることは許されない筈だろう。というか、その研究資料をよく理解出来たな。
アクマを一瞬で消す兵器か。それがあればエクソシストの負担は減ることだろう。だがその兵器は、普通の武器が効かない程強度のあるモノを壊せるということだ。そんな威力を持つ兵器を生み出した暁には、新たな戦争を起こしてしまうと思う。


「それにしても……」

「何?」

「エクソシストってこんな貧弱そうなのでもなれるんだー。オレのイメージ、マッチョのおっさんだったからさ、アレンて真逆だな。黎音に至っては女だし」


手痛い評価にアレンはダメージを受ける。可愛い顔立ちだが、彼だって男なのだ、貧弱と言われるのは精神的に痛かったのだろう。


「今までどれくらいアクマ壊した? その対アクマ武器はどうやって手に入れたの? 初めてアクマ壊した時どんな気持ちだった?」


ジャンの好奇心に満ちた矢継ぎ早の質問に、アレンは困ったような笑みを浮かべる。それはそうだ、彼にとって、なるべく触れてほしくない過去なのだから。


「ジャン、あまりクビをつっこまない方がいい。さっきのアクマのことといい……これ以上伯爵の目に留まるようなことはやめるんだ。危険だよ」


その言葉にジャンはむっとした顔になる。アレンは親切心から言っているのであろう。だがジャンにとっては余計なお節介でしかない。その年齢にしては聡明な彼にとっては、生半可に聡明であるが故、自分の力を過信する。


「あげる」

「ん? タマネギ?」


ぽいっと投げたのはぜんまいのついたタマネギ。それはアレンのすぐ側で爆発する。私は予め知っていたから離れていた。距離にして2メートルほどだろうか。だがそれでもこちらにまで涙腺を刺激する成分が来ている。直撃した彼は(たま)ったものではないだろう。


「へっへー、オレ発明タマネギ爆弾だい。アクマの侵略をだまって見過ごすなんてごめんだね! 何が『危ない』だ、子供扱いすんな貧弱!」

「目……ッ、目が……」


それなんてム○カ。ジャンは颯爽と走って行った。子供臭い奴だ、ああ、子供だった。


「逃げられたね」

「ったく、知らないぞ」


収まらない涙を拭いつつ、突き放した言葉を吐く。紳士らしくない台詞だな。


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