04
あるようには見えない灰色の地を駆ける。アクマの放つ弾丸は鎌で薙ぎ払った。アクマの群れとの距離はまだ遠い。身を捻る。鋭く息を吐いた。走った勢いのまま、手の内のねじくれた凶器を真横に振るった。残撃と共に雷が飛ぶ。雷を模した残撃を放つ技である“覇弾”に、雷を混ぜてみた。

雷閃ほどはいかなくとも、随分と雷をコントロールできるようになった。元々破壊力のある“覇弾”と合わさり、その威力は爆発的に上がる。群れは一瞬にして黒炭と化した。ショートした機械のように、伸びたコードが電気を放つ。

これで与えられたノルマは達成した。それを与えた張本人は、背もたれのない丸椅子に腰かけていた。悠長にも彼の周りを浮遊している本を読んでいる。なんて非現実的な光景だ。夢の中だからか。そうじゃない。あんなにも苦労したというのに、こいつは。ふつふつと怒りがわいてくる。

雷閃の頭めがけて鋭い蹴りを放つ。それは彼をすり抜けた。予想とは違った展開に軸がぶれる。勢いのまま地面に倒れる羽目になった。


《終わったのか、早くなったな》


慌てた様子もなく雷閃は微笑を零す。このタイミングでの笑顔は嘲っているかのように見えるが、こちらはそれどころではない。


「え、え? 何ですり抜けた?」

《言ってなかったか? オレ、精神体だから、集中しないとモノに触れないんだよ》


ほら、と言って近くを浮いていた本に触れようとする。しかし手は本をすり抜けた。あれか、幽霊みたいな存在か。彼は人ではないのだと、改めて思い知らされる。


《お前さ、目の前で人が死んで、動揺するか?》


唐突に雷閃が言う。どうしてそんな問いをするのだろう。


「人が死ぬのはアタリマエ。戦場なら尚更。違う?」

《いや。でも、人間だったら普通、動揺するだろ》

「狂ってる私に、人間らしい感情求められても」

《……ま、いいんだけど》


訳知り顔で雷閃は頷く。どうにも癇に障る。噛みついてやろうとしたが、その前に彼が口を開いた。


《そろそろ戻ったらどうだ?》

「はいはい」


毒気を抜かれ、適当に返事を返す。雷閃が指を鳴らした。途端、曖昧になる意識。水中の泡のように、上へ上へと登っていく。


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