01
あれから1年の時が過ぎた。長いようで、とても短い1年だった。その間、教団で過ごしていて分かったこと。どうやら、私に恐れを抱いている人たちがいるらしい。主に、探索部隊(ファインダー)の中で。

心当たりはある。イノセンス回収の任務で見殺しにしたり。アクマの人質となった者ごと斬り捨てたり。大体、邪魔なのだ。時間稼ぎ程度しか出来ないのに、うろちょろと戦場に入ってきて。余計なお節介ほど煩わしいものはない。それに、私に与えられた任務はイノセンスの回収、アクマの破壊。彼らを助けなければいけない義理はない。私は宣告している。

それが噂となって。尾ひれがついて。色々とあだ名がついているようだ。〈雷神〉だとか。〈ソア〉だとか。恐らく、両方とも雷を操るイノセンスから来た名だろう。雷神は、読んで字のごとく、雷の神。ソアとは北欧神話の雷神、トールの英語読みだ。私の武器は槌ではないというのに。もうひとつが、あまり呼ぶ者はいないが〈第四の騎士〉。ヨハネの黙示録に登場する、鎌を手に死を運ぶという騎士。初めて聞いた時、納得したものだった。

噂とあだ名だけが独り歩きして、本名よりもその名の方が有名になってしまった。〈ソア〉の名の方が有名らしく、そう呼ばれることが多い。自分が呼ばれたと分かればなんでもいいが。

それから。どうやら元帥に近い者だとも噂されている。それすらも敬遠される要素となるらしい。あまりにも強いと、化け物じみて見えるということか。

勝手に言っていればいい。異質なものを排除しようとするのは人の本能的な部分に組み込まれているのだから、彼らの反応はとても人間らしいことだ。理解出来ないわけではない。しかしその『化け物』が彼らの命を握っている。皮肉なことだ。

なんにせよ、そんなこと、私には関係ない。
関係、ない。


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