13
しばらくアクマの掃討に力を注いでいると、違和感が身体を襲う。動きが鈍くなってきたのだ。何だ、何が起こっている。
レベル1は残り1体となった。奴が放った弾丸を鎌の広い刃で防御する。鎌を振り上げ、最後のアクマの命を狩り取ろうとした時、それは起こった。
身体が、動かないのだ。
どれだけ力を込めようと、まるで見えない型に嵌められたかのように身動きが取れない。唯一動くのは首。蜘蛛が視界に入らないようにして神田の方を向く。彼も動けていないよう。レベル1がこんな能力を持つとは思えない。ならば、あの蜘蛛か。
「テメェ、何しやがった」
[あたしはなーんにも? あんた達が勝手に蜘蛛の巣に引っ掛かっただけだよ!]
蜘蛛の巣だと? そんなものは見えない。不可視の糸? 駄目だ、分からない。
[無様だねえ、エクソシスト。こんな簡単に隙見せちゃっていいの? まあいい、あたしの足、奪ってくれたお礼だよ]
トン、と。蜘蛛の足が神田の腹を押した。ただそれだけに見えた。違う。貫いた。背から足の先が見えている。
「ッ……!」
「神田!」
足を引き抜く。栓となっていたそれが抜かれればどうなるかは目に見えている。案の定、血が噴き出した。それでも神田は動かない。否、動けない。
この状態で戦力を削られるのは痛い。足2本は削ったようだが、神田と私の戦力は同程度。しかし私はレベル2を相手にしたことがない。となれば、神田より下と言えよう。そんな私に倒せるか? この状況で?
思考を巡らせる。レベル2に勝つ方法。蜘蛛を直視できない私が。目を瞑って戦闘? 気配で大体の位置は分かるが、敵味方の判断まではまだ出来ない。最悪、神田も斬ってしまいそうだ。
そもそも動けない状態から打破しなくては。何が私達の動きを止めているんだ? 蜘蛛の巣? 糸? そもそも、どうやって糸を斬る?
[あはは、伯爵様にいい土産が出来た]
蜘蛛が足を振り上げた。今度は何をするつもりだ。神田が叫んだ。
「バカッ、後ろだ!」
後ろ? そうだ、私は今まで何と戦っていた。レベル1のアクマではないか。顔を前に戻す。ボール状の身体から突き出している砲台の1つが、頭に当てられた。防ごうにも動けない。来るべき衝撃に備えてぎゅっと目を閉じた。観念したのだ。頭を撃ち抜かれるのなら痛みを感じず死ねるだろう。好きな世界で死ねるなら本望。
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