10
汽車を降りると、白いコートを来た探索部隊(ファインダー)が待っていた。


「は、初めまして、神田殿、黎音殿! 俺は探索部隊のリヒトと言います!」


白金の髪に空色の大きな目。小柄な背丈からして、同じくらいの歳かと思ったが、どうやら神田よりも年上らしい。どういうことだ。世界って不思議。緊張しているのか、ガチガチに固まった彼に苦笑を零した。神田は悪評が多いからな。


「はじめましてー。んな緊張しないでよ。こっちまで固くなりそう」

「す、すみません」

「おい、現状はどうなってやがる」


神田の問いかけに、あたふたと資料を探し始める。忙しない奴だ。


「えっと、アクマの目撃情報は今のところありません。しかし、未だ行方不明者は増える一方です」

「森に向かう子供を尾行したりしなかったの?」

「したのですが、森に入った途端見失ってしまって……」

「森の中は調べたのか」

「はい。ひとつ小屋がありました。女性が1人住んでいたので聞き込みを行いましたが、彼女はそんな人影見ていないそうです」

「あっやしー」


にやにやと呟く。リヒトは怪訝そうな顔。


「怪しい、ですか?」

「うん。森がイノセンスの影響で神隠しの場になってるんなら、影響を受けていないその人は適合者かなー」


リヒトの顔に浮かんだ喜色。だがそれを両断する。そう上手くいく筈がない。考えるなら最悪の場合を。


「けど、違うんなら。ブローカーかも知んない。もう1つ考えられんのは、その人はアクマで、兄弟の居場所を知っていて、しらばっくれてる」

「しかし、アクマの目撃情報はありませんし――」

「そこだ。仮にイノセンスの奇怪現象だとする。だがイノセンスがあるってのにアクマが居ねェ。高位レベルのアクマが統率してるかもしれねェ。行くぞ」

「そだね。化けの皮剥がれるかもしれない」


森へ歩みを進める。慌ててついてこようとするリヒトに、神田が戻れと言う。


「俺も行きます!」

「邪魔になるだけだ。ついてくるな」

「大丈夫です! こう見えて体術の心得はあります、結界装置(タリズマン)もありますし――」

「あのさあ」


こういうキャラは嫌いじゃない。子犬属性でむしろ可愛い。ただ、聞き分けのない奴は嫌いだ。


「新人の私に言われたくないかもしれないけど。何を根拠に大丈夫だって言ってんの? 適合者じゃない癖に、体術が何になる?
 結界装置? そんなん時間稼ぎくらいしかならないっしょ。アクマを壊す武器も、身を守る術も持ってないのに。そんなの足手纏い、死ぬのがオチ」


リヒトが押し黙る。その顔に浮かんだ表情は怒り。それはそうだ。年下の、しかも新人に言われたくはないだろう。だけど私は続ける。


「もう一回言うよ。キミは、じゃーま」


- 38 -
*prev | next#
return
top
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -