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汽車を降りると、白いコートを来た
探索部隊が待っていた。
「は、初めまして、神田殿、黎音殿! 俺は探索部隊のリヒトと言います!」
白金の髪に空色の大きな目。小柄な背丈からして、同じくらいの歳かと思ったが、どうやら神田よりも年上らしい。どういうことだ。世界って不思議。緊張しているのか、ガチガチに固まった彼に苦笑を零した。神田は悪評が多いからな。
「はじめましてー。んな緊張しないでよ。こっちまで固くなりそう」
「す、すみません」
「おい、現状はどうなってやがる」
神田の問いかけに、あたふたと資料を探し始める。忙しない奴だ。
「えっと、アクマの目撃情報は今のところありません。しかし、未だ行方不明者は増える一方です」
「森に向かう子供を尾行したりしなかったの?」
「したのですが、森に入った途端見失ってしまって……」
「森の中は調べたのか」
「はい。ひとつ小屋がありました。女性が1人住んでいたので聞き込みを行いましたが、彼女はそんな人影見ていないそうです」
「あっやしー」
にやにやと呟く。リヒトは怪訝そうな顔。
「怪しい、ですか?」
「うん。森がイノセンスの影響で神隠しの場になってるんなら、影響を受けていないその人は適合者かなー」
リヒトの顔に浮かんだ喜色。だがそれを両断する。そう上手くいく筈がない。考えるなら最悪の場合を。
「けど、違うんなら。ブローカーかも知んない。もう1つ考えられんのは、その人はアクマで、兄弟の居場所を知っていて、しらばっくれてる」
「しかし、アクマの目撃情報はありませんし――」
「そこだ。仮にイノセンスの奇怪現象だとする。だがイノセンスがあるってのにアクマが居ねェ。高位レベルのアクマが統率してるかもしれねェ。行くぞ」
「そだね。化けの皮剥がれるかもしれない」
森へ歩みを進める。慌ててついてこようとするリヒトに、神田が戻れと言う。
「俺も行きます!」
「邪魔になるだけだ。ついてくるな」
「大丈夫です! こう見えて体術の心得はあります、
結界装置もありますし――」
「あのさあ」
こういうキャラは嫌いじゃない。子犬属性でむしろ可愛い。ただ、聞き分けのない奴は嫌いだ。
「新人の私に言われたくないかもしれないけど。何を根拠に大丈夫だって言ってんの? 適合者じゃない癖に、体術が何になる?
結界装置? そんなん時間稼ぎくらいしかならないっしょ。アクマを壊す武器も、身を守る術も持ってないのに。そんなの足手纏い、死ぬのがオチ」
リヒトが押し黙る。その顔に浮かんだ表情は怒り。それはそうだ。年下の、しかも新人に言われたくはないだろう。だけど私は続ける。
「もう一回言うよ。キミは、じゃーま」
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