07
「リナリー、黎音!」


席を探してうろついていると、ラビから呼びかけられた。ラビの周りは丁度空席。こっちへ来いと手招きされる。他に席も見つからないので、好意に甘えることにした。


「団服似合うさねー」

「私もそう思ってたの」

「あはは、ありがと」

「さっすが科学班さ、いい仕事する。すっごい可愛い」


にっこり。いい笑顔でそう言われる。なんだこれは、羞恥プレイか。さっきから恥ずかしいことばかりしやがって。顔が赤らんでいくのを止められない。気を紛らわせるように、バターを塗りたくったトーストに(かじ)りつく。ラビの正面に座るんじゃなかった。仮面といえども、好きなキャラの満面の笑み、直視できない。


「あれー、黎音、オレに惚れちゃった?」

「自意識過剰乙」

「それはないわ、ラビ」

「……酷ェ」


惚れるだと? それはない。ラビに抱くのは憧憬。こういう人がいればという。愛じゃない。そもそも、私が人を愛したら――。


「あれ、黎音、朝メシそれだけなんか?」

「それだけって……普通だよ、普通。むしろ多い」


リナリーはサンドウィッチ、ラビはカルボナーラ。リナリーは1.5人前、ラビは3人前くらいだろうか。リナリーでさえそうなのか。多い。見てるだけで腹が膨れそうだ。


「黎音ったら、最初はトースト2枚とサラダとオレンジジュースだけだったのよ」

「え、んじゃそのハムエッグとパンナコッタは?」

「ジェリーさんのサービス」


ハムエッグをもう1枚のトーストにのせる。食べきれないかと思ったが、意外といけそうだ。美味しい。


「普段はコーンポタージュ1杯とか、そんなだったし。今日は朝動いたから食べれるけど」

「そうそう、黎音ったら強いのよ!」


リナリーが今朝のことをラビに語り出す。パスタを啜りながら相槌。その様子を眺めながらサラダに取り掛かる。
熟したトマトは甘く、レタスは瑞々しい。ドレッシングなんてかけなくても十分いける。いい素材使っているな。


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