06
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広い。食堂と言われて思い浮かぶ広さを超越している。そんな広さのある空間だが、朝飯時だからだろう、人が賑わっている。騒がしい。
ジェリーのもとへ案内される。忙しなく手を動かしながら、ジェリーは顔を出した。
「はーい、いらっしゃい……って、ンマー可愛い子! 新しく入ったの?」
「昨日入ったのよ。黎音って言うの。黎音、ジェリーさんよ。ジェリーさんの作る料理、とっても美味しいんだから!」
「嬉しいこと言ってくれるわね、リナリー! 何が食べたい? なんでも作るわよ〜!」
マジでオカマだ。初めて見た。テンション高い。ついていけない。
「えっと……トースト2枚とサラダをお願いします。バターつけて下さい」
「あら、それだけ?」
そう言われても。これでも多い方だ。コーンポタージュだとかオレンジジュースだとかを一杯、なんていうのはざらである。
オレンジジュースと言えば。
「あ、果汁100%のオレンジジュースってあります?」
「あるわよーん。待っててね、すぐ作るから」
リナリーも注文し、後は待つだけ。頼んだものはすぐに出された。早い。渡されたトレーに乗っていたのは、頼んだものと、注文した覚えのないハムエッグとパンナコッタ。誰かのと間違ったのだろうか。指摘しようと口を開く前に、ジェリーが言った。
「それはサービスよ。エクソシストなんだから、朝だろうとちゃんと食べなさい! アンタ、ただでさえ細いのに、そんなんじゃ倒れちゃうわよ!」
お前は口うるさい母か。
母。私の母は放任主義だったため、朝ごはんにとやかく言われたことなかった。なんだか
擽ったい。ありがと、と口内で呟く。
本気で感謝の念を持つと、言葉にするのが躊躇われる。リナリーとジェリーが顔を見合わせてウインクしあう。計画通り、とでも言いたいのか。止めてくれ、性に合わない。
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