04
金属音が鳴り響く。もうかれこれ何時間やり合ったのか。時間の概念は失った。疲れはない。ただ、ひたすらに楽しい。私は、いや恐らく神田も、純粋に戦いを楽しんでいる。
これはただの試合。だがそうではないとも言える。使っている武器は、木刀でも、間引きした練習用の武器でもない。本物だ。触れれば傷ができる。当たり所が悪ければ、死ぬ可能性だってある。しかし両者とも傷はない。どうやら総合的な力は互角らしい。

神田の剣技を紙一重で避ける。大きく避けるのはただの隙になる。紙一重、ほんのすれすれが好ましい。そんな『知識』は持っていなかった。だが私は持っている。戦った事はないはずなのに、経験も一緒に。

大鎌は近距離の戦闘には向かない。対少数戦も同様に不利。片刃は斬るというよりも薙ぐことが得意である。内向きに刃がある鎌は、一定距離より内に入られると自身も傷つける危険性があり、思うように振れない。

だがそれは片刃の場合だ。この鎌は両刃。薙ぐだけでなく、槍のように突くこともできる。

神田と自分の身体の間に刃を滑り込ませ、押す。舌打ち。刀に阻まれた。鍔迫り合いになる。戦闘の知識と、経験。そのふたつはあるものの、腕力までは流石につかない。それに相手は男。根本的な腕力が違う。鍔迫り合いは、こちらの不利。左へ力を逃がす。支点がずれ、神田がよろめく。その隙をつき、距離をとった。

イノセンスの技を使うのは禁止。ただ武器だけを使った戦闘。雷を使えれば、目くらましくらいは出来るのに。
額を流れる汗を拭う。目に入ったらたまったものではない。神田を相手に視界が狭まるのは死を招く。相手はこちらに駆けてくる。丁度いい距離。鎌を薙ぐ。受け止められた。薙いだ方向とは逆に弾かれる。適合者だからか軽く感じられるが、実際は相当の重さ。後ろに持っていかれる。腹ががら空き。
その隙を逃す神田ではない。六幻が腹を襲おうとする。だがこちらとて黙って攻撃を受ける気はさらさらない。刃が後ろに持っていかれたのを利用し、柄で受け止める。遠心力がかかったそれは六幻を弾き飛ばした。
それほどの負荷がかかった鎌、こちらも持っていられるわけがない。同方向に飛んでいく。二振りの武器が大きな音を立て、床を転がる。光が舞った。発動が解けたのだ。静寂。二人分の荒い息が唯一の音。耳音で心音が激しく自己主張する。


「……引き、分け……?」

「チッ……」


また舌打ち。床にへたり込んだ。コンクリートの冷たさが気持ちいい。


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