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にこりと元の笑顔が雷閃に戻る。


《んな話はどうでもいいんだよ。またここに呼んだのは、お前の訓練の為なんだから》

「訓練? 何の?」

《戦闘。お前の中でずっと見てたけど。レベルの低いアクマならまだしも、高位のアクマやノア相手なら、感情のまま向かっても返り討ちだぞ。それに、お前の狂気、人に向けられちゃたまんない》

「う゛……」


しっかりと気付いているではないか。何が、どうだか、だ。

しかし、雷閃の言うことももっともだ。慣れないまま、力押しでいったところで敵う筈がない。アクマとの戦闘に慣れること、筋力をつけることが必要だ。


《そういうわけで、戦闘開始》

「は? え、な」


語尾に音符のつきそうなほど軽い口調で発せられたのは不穏な合図。なに、と続ける前に、目の前にボール型のアクマが出現した。


「アクマ!? え、なんで、ここ、え、は?」

《早く倒せよ、死ぬぞ。精神が》

「早く言えッ!」


突然のことに頭がついてこない。雷閃のどこか楽しげな声に苛立ちを覚える。精神とはいえども、生死に関わるような大切なことを軽いノリで言わないで欲しい。本当にやめてくれ。心臓に悪い。アクマは雷閃には目もくれず、私に銃口を向ける。


「ッ、“堅守”!」


咄嗟に耳の飾りに触れ、守りの言葉を唱える。雷の壁が無数に放たれた弾丸を滅す。


「“破邪(ハジャ)”」


鎌を振り下ろす。アクマに触れた途端、ガラス細工のように砕けた。残されたのは、灰。


《我流とはいえ、身のこなしとか、技の使い方はいいんだけど。レベル1、しかもたった1体相手に技使うなんてな。無駄にエネルギー食うぞ。少なくとも、雑魚50体相手に鎌一振りで倒せるようならねーと。物語進んでから苦労する。何の為の広範囲に効く武器だ。それくらい出来るようになれ》


表情に合わない厳しい言葉。一振りで50体とか、どこの英雄だ。


《こんな感じで夢の中でやっていく。言っておくが、今のはただの様子見。次はざっと10体ほど相手してもらうから》


有無を言わせない笑顔。鬼だ。鬼がここにいる。


《向こうでも鍛錬してろよ。この場所は精神世界なんだ、いくらここで鍛錬しても筋力はつかない。要はイメージトレーニングみたいなもん。死にたくないなら、強くなれ。
 それじゃ、また夢の中で》


言いたいだけ言った。そんな様子で雷閃は私の顔に手をかざす。光が舞った。意識が、浮上する。


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