16
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去っていく背中を見ながら、コムイは思考する。


肝が据わっている。それが、彼女を見ての第一印象。はじめてアクマを目にし、はじめてアクマと戦い、はじめてアクマを壊した。人の姿から豹変したアクマを、逡巡(しゅんじゅん)するそぶりもなく、だそうだ。普通、あんな化け物を目にすれば恐怖を覚えるだろう。元が人間の姿だったら、尚更。
しかし彼女は、躊躇(ためら)いもなく破壊した。彼女の体つきを見るに、戦闘とは関わりのない生活をしていただろうに。
だがしかし、正門前での彼女と神田の戦闘を目にして、戦い慣れているかのように感じた。そして、たとえ人間相手でも容赦はしないであろうことも。

彼女の目は、常に真っ直ぐだ。怯えに揺れるわけでもなく。元居た世界と違うと言われても、戸惑うわけでもなく。ひたむきに。それどころか、笑みを浮かべる余裕さ。14という年齢で。

ただ、どこか人を拒絶している。いや、違う。深く踏み込まれるのを警戒しているのか。ラビと似ている、気がする。表情をうまく隠すところ、が。こちらが踏み込む前に、上手く避けるところが。
先程の呟き。気まぐれというのは建前で、本音はあちらなのだろう。壊したいから、戦う。それは、どういうことなのだろうか。


《コムイ……話が、ある……》


ヘブラスカの声に我に返る。


《あの、イノセンス、は――》

「……何だって?」


信じられないことだ。雷を操る、鎌のイノセンス。他の装備型のイノセンスと、何ら変わりがあるわけでもない。それがどうして、そんな重荷に?
いや、変わりがないわけではない。そうだ、現に時空を越えてきたではないか。


「黎音くん……」


彼女はどうも、大変なことに巻き込まれてしまったようだ。


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