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「このことはなるべく内密にね。未来から来たなんて、そうそう口に出すものじゃない。とはいえ、黎音ちゃんのことだ。誰かに言うときは黎音ちゃんの判断に任せるよ」


そうコムイは言うが、私は他の誰にも言うつもりはない。未来を聞かれても困る。私の知っている未来は、この世界の未来ではないのだから。


「未来から来た人間、ねェ。
 黎音、このこと、じじい……あー、ブックマンっつー、オレの師匠に言ってもいいか?」

「ブックマン?」


師匠、だと? いつもじじい呼びだから違和感を覚えた。


「そ。本名はねェから役職名なんだけど。オレの本職さ。つってもまだ見習いだけどな。
 ブックマンってのは記録者さ。歴史には必ず裏がある。人に伝わっていく歴史ってのは、戦勝国がいいように作ったもんだ。その裏歴史を、この眼で見て、記録するんだ。
 黎音のように未来から来たってのは、事例がない。イノセンスの奇怪現象だとしてもさ。記録対象とするのは十分だ」

「へぇ、そんな仕事があるんだ。いいよ、構わない」


どうやらブックマンとして興味を持たれたようだ。確かに、珍しいだろう。というか、そうそうあっても困る。記録されるのは構わない。
だが、どこかで『私』を見破られそうで嫌だ。それは、私を壊すのと同意義。いいか。そうなったら、彼の仮面も剥いでやれば。


「さてと、キミのこともわかったし、移動するよ」

「何処に行くんですか?」

「ふふーん、来てからのお楽しみ」

「黎音、頑張るさー」

「え、ラビは行かないの?」

「オレはこのことをじじいに伝えてくるから遠慮するさ」


苦笑交じりのラビの言葉に嫌な予感しかしない。ヘブラスカの元へ行くのだろう。きっと。


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