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「本題に入ろう。ラビから、急に空から落ちてきたって聞いたんだけど。詳しく聞かせてくれるかい?」


来た。唾を呑み込み、先程考えた設定通りに話し始める。


「自分の部屋で本を読んでいて、眠ってしまったようです。その時に見た夢の中で、雷閃っていう、私のイノセンスと同じ名前の青年と会いました。彼が言うには、ここは過去の世界らしく――」

「過去の世界!? なら、黎音は未来から来たってことなんさ!?」


今まで沈黙を保ってきたラビが口を開く。コムイも同じことを思ったのだろう。二人の困惑を含んだ視線が向けられる。


「何か、それを証明できるものは?」

「えっと……今、日本ってどういう状態ですか」

「誰もわからない」


ラビが語り始める。その目は本職のときのそれだ。


「日本国はもう300年近く他国と接触していない。貿易すら拒絶している国さ。誰も入れず、誰も出てこれない。だからこそ、国の内部は誰もわからない」

「それ、なんですけど。私の世界では、鎖国は……150年? それくらい前に終わりました。今では輸出入なんて当たり前です。海外に企業が進出しすぎて、空洞化しているくらいですし。
 それに、私の服。私、日本に住んでたんですけど。ここでの日本は古くからある和服が主流だと思います。この服は似ても似つかないかと」


黒のサルエルに、黒の、あー、何といえばいい、Tシャツ、でいいのだろうか。服に関する知識が少ないので説明し辛い。そこ、黒ずくめとか言わない。女失格とか言わない。

パンク系な格好だった。そういえば。これが和服なわけがない。というか私がいた世界でもこんな恰好している人多くはない。


「イノセンスの奇怪現象……か?」

「そうなるんですかね。雷閃から、『お前は適合者だから来い』といったことを言われましたし。その夢から覚めたら、空から落ちてました」

「うん、奇怪現象である可能性が高いかな。イノセンスと同じ名前の青年に呼ばれたってことはね。
 それに、教団のデータベースに、キミの情報はなかった。何一つ掠りもしなかったよ、あらゆるデータが揃っている筈なのにね。普通の生活をしていれば、少しくらいは見つかる筈だ。それすらなかった。だから、信憑性のあることだと思うよ。こと、イノセンスが関わっている事象だしね」


予測通りだ。これで騙っていたらどうなっていたことやら。


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