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「それにしても、黎音って強いんさね」
「そうかな、さっき戦ったのがはじめてなんだけど」
「嘘だ、あんな強いのにか!?」
沈黙を守っていると、先程の神田の言葉を気にしたと思ったのか、ラビが話し出す。
嘘だと言われても困る。今まで戦闘なんかとは縁も所縁もない平和な所に住んでいたのだ。さっき戦ったのがはじめてなのが当たり前。あれか、最強設定なのか。戦闘が楽なのでいいが。
そんなこんなしている内に、室長室へと着いた。ラビは単独任務の帰りだったらしい。報告するから待っていろと言われ、仕方なく扉の前で待つ。
いろいろと、事情を聞かれることだろう。さて、どう答えようか。異世界からきた、だなんて言ったところで、頭を疑われるのがオチだ。かといって、元々この世界のどこかに住んでいた、などと言っても
繿褸が出た時に対処しきれない。
そもそも、教団にあるデータベースには私のデータがないだろう。ならば実在する場所に住んでいたとすれば、すぐ見破られる。
嘘だけで構成された設定を話すか。多少疑われても本当を交えた嘘を話すか。選択するとすれば、後者。見破られた際のリスクを考えれば其方を話すべきだろう。
そうとなれば、どこまで本当のことを出すかが問題だ。
《(この世界が漫画になっていること。それだけは絶対に言うな)》
雷閃の声が頭に響く。何か影響するものがあるのだろうか。わかった、と呟くのと同時に、目の前の扉が開かれた。
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