08
中に入ってすぐ、神田が別行動しようと方向転換する。
「ユウちゃん、自己紹介くらいしようさー」
「その名で呼ぶなっつってんだろうが糞兎」
今にも斬りかかって来そうなほどの殺気を纏い、ラビを睨む。視線だけで人を殺せそうとはこのことか。
「あいつは神田ユウって言うんさ。ユウちゃんって呼んでや――」
「刻む」
ラビの言葉に六幻が構えられる。だらだらと冷や汗を流し始めたラビ。自業自得だ。二人の間に割り込む。ここで喧嘩されたら私まで被害を受けそうだ。
「黎音です。よろしく、神田」
微笑を湛えて自己紹介すれば、舌打ちをされた。刃の目が、私を睨む。
「お前、気にくわねェ」
吐かれたのは否定の言葉。ラビが非難の声を上げるが、気にした風もなくこの場を離れていく。
初対面の人にそんなことを言われるのは初めてだ。敵意を剥き出しにしなければ、当たり障りのない対応は出来る方だと自負している。それなのに、あの神田の言葉。心当たりはある。先程の戦闘だ。流石に、あれを見せられれば『気にくわない』と思うか。
「悪ぃ、黎音。アイツ、いつもああだから気にすんな」
「うん、大丈夫だよ。気にしてない。それより、どこに行けばいい?」
「さっき会話してたコムイって奴の所さ。案内してやるからついてこいよ」
「わかった」
ラビに連れられ、コムイが居るであろう室長室を目指す。
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