07
《(おい、正気に戻れよ)》


頭に響く、雷閃の声。その声に思考が冷静になっていく。


「ッ、あ、ごめん」


鎌を離し、元の飾りの状態へ戻す。危ない危ない。雷閃がいてくれて助かった。あれが悪魔なら、雷閃は天使か。ああ、イノセンスか。そのままラビ達の元に戻ろうとした時。


「テメェ、何者だ」


刃が向けられる。仕方ない、か。あんなの見せられれば、誰だって警戒する。 自分で蒔いた種だ、仕方ない。しかし嫌な種を蒔いてしまったものだ。


「私は人間です。そんなに信じられないようでしたら、腕の一本でも切り落としましょうか。中身見れば納得して頂けるでしょうし」


鎌を再び発動させ、左腕に(あて)がう。ラビの制止の声が聞こえてくるが、無視。尚も睨んでくる視線に、刃を滑らせる。


〔ちょ、ちょっと待って、神田くん! 彼女と話をさせて!〕


無線ゴーレムから聞こえてきたコムイの声に、小さく息を吐いた。ああは言ったものの、本気で斬り落とす気はない。痛いことは嫌いだ。
それにしても、本当にトリップしてきてしまったのか。熱を持った傷が、ここが現実であることを意識させる。薄く血の(にじ)んだ腕をさすりながら、コムイの問いかけに耳を傾ける。


〔黎音くん、だっけ? キミのその鎌はイノセンスかい?〕

「そうさコムイ、さっきそれでアクマ壊してたさ。オレが見てた」


問いに答えたのはラビ。


〔ラビが言うならホントだね。いいよ、入ってきて〕


とは言われても。日本刀を突きつけられたこの状態でどうしろというのだ。動いたら即座に刺される、気がする。それに気付いたコムイが神田に放すよう促すが、それでも下げない。どうしたものか。溜め息を吐く。


「ユウちゃーん、そう怖い顔してないで、六幻しまいなって」

「馬鹿兎は黙ってろ」

「別にいいよ、ラビ。
 殺したければ勝手にどうぞ。戦力に成り得る駒を殺して、不利になるのはそっちの勝手だから」


挑発の言葉を吐けば、途端に眉間にしわが寄る。しかし、舌打ちをすると、刀を鞘に納めてしまった。つっかかってくると思ったのだが。ちょっと拍子抜けした。まあいい。

門が鈍い音を立てて開かれる。そして3人は教団の中に入っていった。


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