06
呆然としていると、上から殺気。瞬時にイノセンスを発動し、防御する。
殺気の
滲んだ切れ長な目に、後ろで束ねた長い黒髪。手にした日本刀は、鎌と
鬩ぎ合い、嫌な音を立てている。ひと振りの、抜き身の刀のような彼。神田ユウが、そこに居た。
「敵陣に一匹で来るとは、いい度胸だな」
心臓が高鳴った。なんていうと、誤解を生むだろうけど。殺気が、心地いい。
殺られる前に、殺っておしまい?
誰かが囁く。違う。これは自分。知らず、口が弧を描く。
「……何だ、テメェ」
神田も異変に気付いたのだろう。眉間のしわが増えた。六幻を押し弾き、鎌の切っ先を地面に向ける。
さあ、壊してしまおう?
今はダメ。生き物だから。ああ、でも、神田は殺しても死なないんだっけ。
さあ、殺してしまおう?
自分の中に住む悪魔は甘言を囁く。久しぶり、退屈してた? なんて余裕ぶっこいて挨拶してみる。悪魔はクスクス笑い声を立てるだけで返事はない。
マズイ、なぁ、この状況は。神田の攻撃を防ぎながら考える。
――ガチンッ!
六幻が神田の手から離れ、地面に突き刺さる。鎌の切っ先は喉元へ。
「ねぇ、止めてくれない?」
これ以上は止めよう。殺したくなる。腕に少し力を込めれば良いだけの話だ。刃は少しの抵抗を受け、簡単に喉に埋まる。そう、簡単なこと。神田は死なないことだし、試してみてもいいだろうか。なんて考えが鎌首をもたげる。
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