03
パチン、と。何かが繋がる音がした。


「雷閃、発動。“堅守(ケンシュ)”」


気付いた時には、身体が勝手に動いていた。飾りを外し、鎌を巨大化させる。紡いだ言葉に合わせ、自身の周りには雷の壁が。放電するそれは、弾丸が触れると瞬く間に()き尽くした。ラビが驚く気配がする。気にせず、地面に向けた切っ先を、ゆらりと持ち上げた。

死神のように。


「サヨナラ」


鎌を一閃させ、アクマを両断する。今まで平和な世界に居た為、使ったことのない筈の武器は、何故かすんなりと手になじんだ。まるで、戦い方を知っているかのように。雷閃が――イノセンスが導いているのだろうか。
思えば、身体が軽い気がする。トリップのせいだろうか。疑問は尽きない。だが、今悩んでも仕方ないだろう。ガラクタと化したアクマがもう動かないのを確認し、発動を解く。元の飾りに戻ったそれを耳につけながら、ラビの方を見やる。


「お嬢さん、さっきの鎌は、何だ?」


ラビの目つきが鋭いものに変わる。恐らく、仕事中のそれだ。
さて、どうしよう。咄嗟(とっさ)の行動だったため、何も考えていなかった。どうやって誤魔化そうか。とりあえず、イノセンスであると知っているのはおかしいだろう。ならば。


「えっと……よくわかりません。貴方も、持ってました、よね?」


知らないフリをしよう。あわよくば、教団まで連れて行ってもらおう。


「アレはイノセンスってモノさ。なあ、オレについてきて欲しいんだけど?」

「いいですよ。どうせ行くあてもないですし」


行かないつもりはない。共に行く意志を伝える。
ふと、ラビが疑問を口にした。


「そういえばお嬢さん、空から落ちてきたけど、どこから来たんさ?」

「さあ? ここじゃないのは確かなんですが」

「うん? どーゆーことさ」

「家で本を読んでいた筈なんですけどね。いつの間にか上空に居て、パラシュートなしのスカイダイビングさせられてました」


思い出したら腹が立ってきた。雷閃、後でシメる。


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