01
濃紺の空。雲はなく、一面に星が広がっている。唯一の光源である月が眩しい。そんな空が、物凄いスピードで遠ざかっていく。違う。空が動いているわけではない。私が動いているのだ。ひゅー、と風を切る音が耳元で唸っている。
そう、私。現在進行形で落ちてます。
「なんて
流暢な事言ってられないからいやあぁあああぁぁああー!!」
落ちる! 死ぬ! 雷閃ぶっ殺す! もうすぐで地面に着きそうだ。ああ、こんな終わりは流石に嫌だな、でも楽しかったな人生、なんてしんみりしていると、聞き覚えのある男性の声が聞こえてきた。
「あぶねェ!」
そのまま声の主の腕の中にダイブ。それでも結構な高さから落ちてきた勢いは殺せず、二人で仲よく地面に倒れた。
でもまあ、誰だか知らないけど、受け止めてくれる人が居たから助かった。あのまま地面に激突していたら、恐らく潰れたトマトのようになっていただろう。グロテスク。想像するだけで鳥肌が立つ。
「いてて……何で落ちてきたのかわかんねェけど、ダイジョブか?」
「ッ、すいません、大丈夫です。ありがとうございまし、た……?」
男性の上から退きながら覗きこんだ顔は、見知ったものだった。それはこの世にはいない筈の人で。
「……は?」
「? どしたんさ?」
「……あ、いえ、人違いだったようです」
待って下さい。本当に私トリップしてきてしまったのでしょうか。まさかレイヤーさん? いやいやメイクした形跡ないし本人でしょう。
「……はは……」
何で。どうしてラビが目の前に居るのでしょうか。炎のような赤い髪に、エメラルドが
嵌った垂れ目。イメージ通り。腰細い。イケメソ。テライケメソ。細いよ腰。私もうどうしたらいいの。
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