05
雷閃か。雷を操るイノセンスにはぴったりの名だ。ただ、雷を操るイノセンスの形状が鎌というのが合わない。

いわゆる雷神と()われている、ギリシャ神話のゼウスは雷霆が武器だ。とはいえ雷そのものだが。ローマ神話のユーピテルも同様だ。また、北欧神話のトールはミョルニルという槌を武器にしている。鎌を持つ神といえばギリシャ神話のクロノスだろうか。

まあ、イノセンスだからといって、神話と関わりがあるわけでもないのだろう。神が創った武器なだけで。神話はどうせ、人間が作った物語だ。そんなことを思っていると、スッと雷閃の目が細まった。


《……お前、落ち着いてるな。これから向かうトコは戦場だぞ? お前は死ぬかもしれない。それなのに、何でそう落ち着いていられる?》


さっきとは打って変わり、射るような目線で問い詰めてくる。連れていこうとしているのはそっちだというのに、何を今更。


「受け入れるのは、得意なの」


受け入れる。それは守りだ。何事も受け入れてしまえば傷はつかないのだから。


《……そうか》


その答えに満足していないようだが、雷閃は握っていた手の平に視線を落とす。手を開くと、中にはイヤーカフスのようなものがあった。彼の瞳と同じ、金色の。この世のモノとは思えない程、精巧なそれ。


「え、ちょっ、と!?」

《SHI-erda NI-omi, NA-erda CHI-omi. KEY-omi I-Ep-Sy ZI-eda-om BATSU-omi――》


顔を上に向かせられ、耳元で何か囁かれる。不意にされた行為に、赤面しながら後退る。囁かれた耳が熱い。触れてみると、先程雷閃が手にしていた耳飾りがつけられていた。


《それについてる鎌が、発動するとでかくなって武器になる。あとオレだけの能力なんだけど、壊されない限り発動してなくても、雷操れるから》


ニッコリと人懐っこい笑顔を見せられたら、言いたいことも言えないではないか。


《いってらっしゃい。また夢の中で》

「!!」


辺りに光が充満する。そして私は――意識を手放した。


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