04
《オレは雷閃。本来ならこの、人の姿じゃなくて龍の姿なんだけど、こっちの方が都合がいいだろ》
「へえ、龍、なんだ。対アクマ獣?」
《いや。武器としては大鎌。能力的には、さしずめ、雷を操れる鎌、ってところだ》
「鎌、ね。死神みたい」
なんて私にぴったりの武器だ、と鼻で嗤う。これほどお
誂え向きな武器は無い。
そんな私に対してだろうか。青年がなにか呟いた気がする。しかも、感情の抜け落ちた、能面のような無表情で。今まで人間らしい表情だった為に、目を見張った。
しかし瞬きした後には今まで通りの微笑が戻っていた。見間違いだろうか。そう思えるほど、短い時間だけ。
《そうだ。言葉は何語だろうと分かるようにしておいてやるよ。お前、日本語しか分からないだろ。苦手そうだ》
「う、何故バレたし!」
《オレの姿見て固まってた。話せる気がしない、とでも思ったんだろ》
正解だ。
それにしても、イノセンスひとつでそんなこともできるのだろうか。世界を渡るほどだ、可能なのかもしれない。
《期限は、この聖戦が終わるまで。途中で死んだりしなければ帰してやるよ》
今、サラリと怖いことを言われた気がする。というか、帰れるのか。まあ、行きっぱなしでも困る。
《何か質問は?》
「んー、ふたつほど。
まずひとつ。私がいない間の時間はどうなるの? 大抵トリップって幽体離脱状態か身体ごとかだけど」
《身体ごとだ》
「え、ならもしかして、失踪扱い?」
《大丈夫。同じように時は進むけど、帰す時には元の時間に帰してやるよ》
「へぇ……」
つまりは時を戻すということなのだろうか。なんだか途方もないことのような気がしてきた。
「もうひとつ。イノセンスの名前。キミがイノセンスだと言うのなら、雷閃でいいの?」
《それでいい。本当の名は他にあるけど、オレはその名の方がいい》
そんなものでいいのか。イノセンス本人が言っているのだ、いいのだろう。
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