狂乱
あの後、名残惜しくもアッシュと別れ、また前回通りに進めていく。言いたい文句は沢山あるけど、今は静かにしててやるよ(でも、やっぱりアッシュとずっと一緒に居たいな)。
俺が黙ってたもんだからどんどん進んで、現在地、アクゼリュス。あ、特に物語変えちゃいないから、面倒だし説明は割愛な?
師に誘われ、そのセフィロトへ。
「あ、せんせー?」
髭を“師匠”なんて呼ぶ事に吐き気を覚えたが、これも俺達の筋書通り進ませる為。仕方がないと割り切る。
「どうした、ルーク?」
気味のわりぃ優しい声で、髭が応じる(この期に及んでまだその“仮面”をつけるか)(バレバレなんだっての、気持ちわりぃ!)。
心情を顔には出さず、イオンの首の後ろに手刀で衝撃を与え、気絶させる。まだイオンは知らなくていい。いつでも優しかった彼に、俺からの些細な気遣い。平らな所へ横たわらせてやる。
「俺さぁ、知ってんだよね。預言への復讐、レプリカ計画、その他諸々。あ、俺がアッシュのレプリカってのも」
それを聞き、髭の顔が蒼くなる。
“何も知らない愚かなレプリカルーク”が、どうやって自分の成そうとしていることを知っているのか、と言いたげな顔。
突如、アッシュが姿を現す。
「アッシュ!? 何故此処に――」
「うわ、すっげぇナイスタイミング! 回線でも使った?」
「そんなことをしなくてもわかる。お前のことだからな」
「キャーッ! アッシュ大好き!」
「当然だろう」
髭なんて無視して抱き合う(やっぱり俺のオリジナル様は一番カッコイイ!)。
俺が識っているということ、アッシュが俺と親しいこと、その事実に、髭は驚愕で顔を歪める。
「あははッ、変な顔ッ! なぁなぁ、俺達もこの世界に“復讐”してやりたいんだよ」
「世界のせいで、俺達の人生は狂わされた。預言を狂わせたって、どちらかが犠牲になるしかない世界を観てきた」
「こんな世界、預言を盲信し、その成就だけを願い俺達を蔑ろにする人間共が憎い。だからアンタの計画の邪魔はしないよ?」
「……ほう」
その言葉にヴァンは目を見開き、やがて本性を現す。
「成る程……。まさか模造品ごときに我が計画を知られるとは思わなかった。しかし……。二人共、私の元に来ないか? レプリカルーク、お前は此処で切り捨てるつもりだったが、そうするにはとても――」
「自惚れてんじゃねぇよ、ヴァンデスデルカぁ♪」
パッセージリングに手を翳し、超振動を発動する。するとそれはいとも容易く光の粒子となり、支柱を失った大地は崩壊し始める。
慌てたヴァンはグリフィンをニ体呼び、一体がこちらを掴もうとするが、アッシュが軽々とそれを斬り伏せる。
「ルークッ!?」
と、タイミング良く犯罪者共がなだれ込んで来る。
「ルーク、そんな奴と居ないで早くこっちに……ッ」
差し伸ばされたガイの手を、笑顔で拒否する(アッシュをそんな奴呼ばわりした奴の、いや暗殺の機会を虎視眈々と狙っていた復讐者の手なんて、とれる訳ない)。
茫然とするガイを、ジェイドがティアの元へ連れていく。
譜歌によって作られた障壁。
それが、落ちていく。
「さぁ、舞台は整った! 役者は勿論テメェらだ、預言に縛られた愚かしき
操り人形共ッ!」
「少しは俺達を愉しませろよ? でないと――」
「「退屈過ぎて、殺しちまうかも!」」
くるくるくるくる。
崩落の音を伴って、二人は踊る。
くるくるくるくる。
嘲り嗤う音を奏で、二人は躍る。
くるくるくるくる。
さながら、壊れた人形の様に。
くるくるくるくる。
鮮やかなアカ。
惨たらしい迄に美しく、妖艶に交わる紅と朱。
音素集合体の恩恵を持たぬ者達を嘲るように、ただただ二人は踊り続けた。
(朱は宣告する)
(紅は嘲笑する)
(愚かな人間達に)
踊れ踊れ、狂った様に!
2009/10/03
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