SNOW WORLD
此処は銀世界ケテルブルグ。
その宿泊施設のとある部屋に、二人はガイに拉致られて来た。
いや、実際は、息抜きということで連れてこられたのだが。
しかし、のってきたアルビオールの機関部が故障してしまい、ガイはその修理を手伝っている。つまり、弄ぶ標的という名の遊び相手がいない。よって、退屈。
「すっげぇ! あっしゅ、みろよ、ゆきー!」
だが、バチカルではあまり降らない雪がこんなにも積もっている景色は物珍しく、暇を弄んでいる様子はない。窓にべったりと張り付いてはしゃぐルークを後目に、アッシュは一番暖かい暖炉の前を陣取って本を読んでいた。
「あっしゅ、そといこう!」
「…………」
「あっしゅー?」
反応がない。窓から離れ、黙々と本を読み続けるアッシュに近寄る。
「あっしゅー!」
「ぅ、わ!」
背後からのしかかられ、体制を崩しもろとも床へ。
「つ……! なにしやがる、くず!」
「おれくずじゃねーもん! それよりあっしゅ、そといこう!」
「そと……?」
ちらりと窓を見てみれば、外は大雪。ルークとは対照的に顔を顰める。
「いやだ」
「えー、いこう!」
「さむいだろ」
「さむくない!」
「こんきょは?」
「……うー」
目に涙を溜め始めたルークを見、嘆息する。こうなってしまっては、もう此方が折れるしかない。
「……わかった」
「やったー!」
そのままの格好で外に出ようとするルークを掴まえ、防寒具を着せる。コート、マフラー、手袋、耳あて。すべてあの過保護が用意したものだ。
自分も同じように着こみ、ルークに腕を引っ張られ外へ。
「ゆきー!」
「おい、そんなにはしりまわると――」
注意しようとしたその瞬間、ぼすっと音を立ててルークが雪に埋まる。言わんこっちゃない。再度嘆息し、ルークに近づく。
「ルーク、だいじょ――ぶッ!」
「へへッ、すきあり!」
「こ、んのッ!」
顔面に直撃した雪玉。一瞬何があったかわからなかったが、ルークの得意げな声で瞬時に理解した。
傍にあった雪を引っ掴み、ルークに向かって投げつける。
「きゃー!」
「まちやがれッ!」
足を雪に突っ込みながら逃げていくルークに、雪玉を投げつけつつ追いかける。だが、幾分雪が降り積もっているので。
雪そのものに慣れていないので、ルークを追って走っていたアッシュは派手に転ぶ。
「あははッ! あっしゅもころんだー! あははははッ!」
「なッ! わらうな!!」
羞恥で顔を赤らめるアッシュに近づく。いきり立つアッシュの隣にダイビング。訳のわからない行動に呆然としていると、ぷは、と顔を上げる。
「へへ〜、あっしゅといっしょー!」
雪に塗れて、満面の笑みで言う。
「……ばかか、おまえは」
思わず、そう呟いた。
その後、雪まみれになって帰ったら、ガイにこっ酷く叱られたとのこと。
2010/01/20
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