螺旋に囚われた私達は、
「また例の頭痛か?」
聞こえてきた、ガイの声。
ああ、また、もしかして。
「…ガ、イ……今日、何日、だ?」
「おいおい、どうした? 日付忘れたのか?」
苦笑し、彼は告げる。
だ、と。
「ぁ、あぁ、」
また、だ。がくりと力なく座り込む。
また、振り出しの日。これで、何度目。
繰り返し繰り返し「繰り、返し」終わったと思ったらまた始まり永久に続く螺旋また彼とアッシュと殺し合うのか業はいつまでも俺達を逃してはくれない「い、やだ、もう」嫌だガリガリガリガリ頭皮を額を首を引っ掻くどうして何故「俺達を」ガリガリガリガリ幾度繰り返し変えようと思っても変わらない日々ぬるりと指先が滑った逃げられない囚われた。
「お、おい、ルーク!」
ガイが腕を掴み、自傷を止める。
「一体どうしたん「なあ、ガイ、殺してくれよ」」
そうだ、此処で死んだら何か変わるだろうか。アッシュと殺し合わなくて済むだろうか。
「ガイ殺してくれよファブレ家に復讐したいんだろ丁度いいじゃないか頼むから殺してくれ」
「ルー、ク? 何を言ってるんだ?」
「もう嫌だ疲れたまた繰り返すなんて何で何がしたいんだよ殺したくない何で俺アッシュと殺し合わなきゃいけないんだ嫌だ意味わかんねェよ何で」
俺を呼びに来たメイドが部屋に入ってくる。現状に唖然とし、ガイの指示を受けて人を呼びに行った。
「落ちつけ、ルーク!」
「繰り返し繰り返し繰り返し同じこと何も変わらない此処で死ねば終わるかなねぇガイ殺せ殺せよ殺してくれ大丈夫死体は残んねェからいいよもう無理なんかしなくても思う存分殺してやれよそしたら未来が変わるかもしれない終われるかもしれない俺達が殺し合わなくて済むかもしれない繰り返さなくて済むかもしれないねぇ早く殺せってねぇねぇねぇねぇねぇ」
いや、違う。ここで殺されたって、どうせ死ねない。
「は、ははは」
酷く乾いた笑いが、空虚に響いた。
「ああ、どうせ何も変わらない。未来が過去を決めているんだから。同じ時の中ではどう足掻いても同じ結末。そしてこれは同じ時の中。何も変わりはしない、変えられない」
部屋へ入ってくる人々を空虚な目で見上げ、狂ったように嗤う。
「あははっ、そう、何も変わらない。全てユリアのシナリオ通り。演じさせられているとも知らずに。滑稽な演劇。ははは、あはははははっ」
駆けつけてきた医師が、鎮静剤を打つ。唯為されるがまま、それを眺める。
「……俺達が何をしたって言うんだよ。もう、眠らせてくれよ……」
嘲笑しながら、ルークは泣いていた。
しかし、それを叶える者は、いない。
唯二人は、永遠の時を繰り返すのみ。
螺旋に囚われた私達は、
(死の安らぎなど与えられず)
(永久に生き続ける)
2009/11/08
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