04
地下牢で少年と出会ってから、何日かが過ぎた。昼間は人が多くて行けないが、夜になると、人目を盗んで部屋を出、毎夜少年の元へと向かっていた。
調理場から掠めてきた食糧を渡したり、他愛もないことを話したり。相手は頷いて聞いているだけだったが、それなりに楽しそうだった。恐らく、会話そのものが久々だった為だろう。
掠れた声も、話をした為か大分戻り、本来の音を取り戻していた。

話し込んでいる内に、段々と気になってきたことがある。それが、名前。だが、何度聞いても少年は首を振るだけで、思い出した様子はない。何か手掛かりがないかと、書庫によく篭るようになった。
あのような仕掛けが施され、人目のつかないところにあったのだ、絶対に公式な刑ではない事は分かっている。しかし、何かの文献に載っていてもおかしくはない筈。完全に、完膚なきまでに隠蔽されたのでなければ。
だが、思ったよりも捗らない。地下牢の存在すら、書かれていないのだ。試しに、この国の王女である幼馴染に聞いてみたが、まったく知らないといった様子。
其処まで徹底的に、彼の存在を消す必要性はあるのだろうか。
何れにせよ、完全に手詰まり。
それでも諦めきれず、今日もまた、書庫へと足を運んでいた。何千何万もの数があるこの中から、目的の本だけを探し出すのは骨が折れる。誰も読んだことのない様な、開いた形跡すらないものまでも取りそろえてあるのだから。
行き慣れたここの、まだ足を踏み入れたことのない分類から適当に本を抜き取りつつ、嘆息する。
中を流し読み、大体の内容を読み取る。これも違う。乱暴に本を戻し、次に指をかけ、気付いた。
淡い青の、何処にでもありそうな本。その表紙には、あの仕掛けに似た陣が、描かれている。もしかしたらこれに、何か手掛かりがあるかもしれない。そう思うと、勝手に身体が動いた。
1ページ目には何も書かれていない。2ページ目も、3ページ目も、4も5も。パラパラとページを捲ってゆく。そして、その中心辺りのページに、それはあった。


此ハ悪魔ノ名ノ一字
3番目ノ文字ナリ
其レナルハ――



2009/12/06


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