02
深夜、角灯を手に、ルークは再び書庫へと戻って来ていた。
先刻の事は現実の事だったのか。それを確かめるべく、壁に触れる。


「……あれ?」


沈んで行かない。いくら押そうが、壁は頑として通してくれない。もしや、場所を誤ったのか? しかし、あの黒革の本は近くにある。それを手に取ると、やはり、壁が消えた。
場所はあっている。本を持ったまま中に踏み込もうとしたが、まだ壁があるかのように阻まれて通れない。


「何なんだよ……!」


小声で毒づく。
意味がわからない。
だが、気になる。


「……わかったよ」


仕方ない。何か手掛かりを見つけるまで、とことんやってやろうではないか。
さて、先程はどうしただろうか? 確か、本を戻してから壁に触れたら通れたのだ。ならばと思い実行してみるが、壁は壁、通してくれない。
どうしたものか。
何か、本に仕掛けがあるのだろうか?
本をまた取り、ページを確認し、再び戻して壁に触れてみる。……何も起こらない。


「わけわかんねぇ……」


 朱色の長い髪を掻き毟りつつ、呟く。
大体、自分はこういった謎解きは苦手なのだ。想像力には、暇を他に潰せるようなものがなかった為に長けてはいるが、基本的に頭を働かせなければならないことは不得手である。だがしかし、己の好奇心は、どうしても満たしたい。


「……何か、他に――」


思い、出した。
確か自分は、表紙の譜陣に触った筈。それに触れ、先程と同じようにして壁に手をつく。
しかし、何も起こらない。触れ方が足りないのか? 躍起になり、注意深く指で線をなぞる。隅の隅まで、余すことなく。
 それを元の場所に戻すと、一瞬だけ壁が光った。まさかと思い、壁を押してみると、呆気なく腕がめり込んだ。


「……嘘だろ……」


たったそれだけとは。
呆然としていたが、思い直し、ランタンを手に中へと入る。
薄暗い廊を、真っ直ぐに歩いていく。自分の靴音だけが辺りに響いている。暫くすると、前方にまた、壁。


「なんだよ……行き止まりか?」


部屋を抜け出し、謎解きをして、此処まで来たというのに。しかし近づいてみると、右側へ道が続いていた。大分奥の方に、ぼんやりと光が見える。それに誘われるように、奥へ奥へ。
部屋に居ないことがバレ、誰かが追ってはこないかと、自分の靴音以外が聞こえてこないかと耳を欹てたが、どうやらまだ大丈夫らしい。唯此処に来ていないだけかもしれないが。
苦笑しつつ、兎に角進んでいくと、光の正体が青い焔だと判明した。その焔のお陰か、意外にも明るい。最深部に、牢。
城になら何処にでもある、所謂地下牢、とかいうものか。
牢の中に、二つの焔が灯されている。その間に、鎖に繋がれたヒトが、いた。


2009/11/26


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