小説 | ナノ
きりしまを好きになっちゃうA

斬島くんは美しいと思う。白い肌は私と同じだけど、蒼い瞳とよく映えていて透き通る様で下手な女の人よりとても綺麗。凛とした表情は仕事中も強い意思を感じさせられて、男らしいと思う。綺麗な顔に強い男性の表情も持ち合わせた斬島くんは、完璧だった。

「おい、マヌケ。よそ見してんじゃねぇよ」

美しい斬島くんが視界に入っている中で、汚い言葉が耳に入ってきた。思わず顔を顰めて見ると、田噛が腕組をして迷惑そうにこちらを睨んでいた。

「マヌケとか言う事ないじゃん」
「マヌケだろ、どう見ても。アホみてぇに斬島に見とれてんじゃねぇよ」
「なっ、なんで」
「丸分かりだ、自覚してねぇのがマヌケなんだよバカ」
「ばっ…」
「とっととそこどけ」

こいつに斬島くんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。そうすれば少しは綺麗な言葉が出て来るんじゃないか、と思った。立ち尽くす私を足蹴にして 来たので、思わず「いたっ!」と声が漏れる。思いのほか大きな声が出て、斬島くんがこちらを振り向いた。わあ、目が合っちゃった…!田噛の蹴りがもう一発飛んでくる。こいつ、今に見てろよ。

「何をしている」
「テメェのせいでこの馬鹿な女が邪魔になってたんだよ」
「うわわわ」
「俺のせいなのか?」
「いや、違うよ!私のせい!」
「よく分からないが、済まなかった」
「だりぃ…」

これ以上余計な事を言わないで欲しい。と思った矢先に、「お前もこいつの視線に気付かねぇのかよ」と田噛が言葉を発した。私の表情が固まったが、斬島くんは気付かない様で、「視線…?殺気か」などと言っている。斬島くんのこういう感が鈍くて良かったと思う反面、若干悲しかった。私は気付かない内に殺気を放っていたのだろうか。もし発せられていたのだとしても、今それを向けている対象は斬島くんではなく間違いなく田噛だと思う。

「…つくづく思うけどよ、お前なんでそんな鈍感なんだよ」
「敵の気配を察する鍛錬はしているつもりだが」
「話にならねぇ」

帰って寝る、と捨て台詞を吐いて踵を返し遠ざかる田噛の背中を睨むと、斬島くんがこちらを見ているのに気がついた。視線を向けると、じっとこちらを見られていてどぎまぎした。

「ど、どうしたの斬島くん」
「さっき田噛が言っていた事だが」
「へぇ!?」
「なぜ俺を見ているんだ」
「そ、そそ、それは」
「…もしかしてお前」
「!!」

斬島くんの手がこちらに伸びて来た。こ、これはもしや私の想いが通じたのかも知れない。田噛、さっきは死ねとか思ってごめんね。結果オーライだったよ。きつく目を閉じると、斬島くんの手が私の肩に触れた。くる…これはきっと何かしらの進展がある…!身構えると、斬島くんの声が聞こえた。

「これが欲しかったのか」
「えっ」
「限定販売のどら焼きだ」
「えっ」

目を開くと、斬島くんの片手には白い包みがあった。なにこれ。

「今日は非番だったので並んで買ったんだが、知っていたのか。欲しければ素直に言えばいい。多めに買ったからやるぞ」
「え、どら、えっ」
「なまえも甘味が好きだったんだな、奇遇だ。商店街にある甘味処は知っているか?巨大かき氷が限定で出ているんだが。佐疫は仕事で急がしいし、平腹は洋菓子の方が好きだと言う。田噛は面倒くさがるし、谷崎は甘味は好かないらしい。木舌は減量中だそうだ。なまえ、今度一緒に行かないか。10分以内に食べきれば無料になるらしいぞ。ぜひとも行きたいのだが、情けない事に1人では自信がなくてな…」
「へ、あ、うん、それはもうぜひ」
「そうか、良かった。じゃあ今度の休みにしよう。計画を立てねば…俺は上から攻めて行くからなまえは横から…」
「う、うん。分かった」
「助かる。詳しい時間は今度伝える。じゃあ、俺はもう行く」
「あ、はい、じゃあね」
「ああ」

斬島くんが去っていくと、後ろから誰かに蹴られた。驚いて振り向くと、再び田噛がいたので更に驚いた。

「た、田噛なんで、忍者!?」
「見てねぇとこにいただけでずっと居たんだよクソボケ」
「くそぼけ…」
「良かったじゃねぇか、斬島と出掛けんだろ」
「え?あ…うん…」
「これもひとえに俺のおかげだな。今日の仕事変われ」
「ええ!?」
「なんか文句あんのか」
「…アリマセン」
「よし、じゃあ行ってこい」
「ていうか田噛、なんでここにいたの?」
「とっとと行け、駆け足だ」
「いたっ!くっそ…」

田噛に足を蹴られしぶしぶ走って特務室へ行くと、なんとそこにはさっき会った斬島くんがいた。「田噛はどうした?」と言われたので、「あの、お腹が痛いみたいです」と言うと肋角さんは神妙な顔で頷いた。田噛、たぶんこれバレてるよ。あれ、でも斬島くんと一緒って…田噛もしかして、気を使ってくれて…?そんな考えは、ハードな仕事内容を聞いて吹っ飛んだ。やっぱり許すまじ田噛。







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