小説 | ナノ
ストレート斬島さん

「なまえ、下着のピンク色が透けて見えているぞ」

勢い良く振り返ると、後ろに立っていた斬島がわたしの白いスカートに目線を向けていた。これまた勢い良く手で押さえてみたものの、「前からも見えると思うぞ」と言われてその場に崩れ落ちる勢いでしゃがみ込んだ。一緒にいた佐疫が、「き、斬島…」と非常に気まずそうな顔をしている。きっと斬島にとっては親切心からの言葉だったんだろうけど、ストレート過ぎる。佐疫も一緒に見ていて言えなかったんだろうなぁ。目を泳がせて私の方を見ない様にしている。なんかもうごめんなさい。

「部屋に戻るまで、これでも巻いておけ」

斬島が羽織っていた上着を渡してくれた。「でもこれ、」と言うと、「構わない」と言われたのでありがたくお借りする事にした。斬島と佐疫の方をなるべく見ない様にして、おそるおそる立ち上がる。佐疫が見かねて口を開く。

「斬島、あのさ、注意の仕方がストレート過ぎるよ。もっとオブラートに包まないと、なまえだって恥ずかしいんじゃないかな」
「そうなのか?」
「え、と」
「確かに、頬の辺りが赤くなっているな」

そう言うと、私の頬にひんやりとした斬島の手が当てられた。そのままもう片方の手で前髪を上げられ、こつん、と斬島の額が私の額に当てられた。

「熱でもあるのか」
「…!」
「……ないようだな」

近い、顔が近い。数分前にパンツの色まで見られた奴の顔がこんなにも近いと、もう色々と恥ずかしい。佐疫が半分飽きれた様に、「うん、斬島、そういう事じゃないよ」と言っている。もっと言ってやって下さい。「た、体調は悪くないから!」と言って慌てて離れると、「そうか」と言われただけだった。本当に分からない。

「わ、わたしもう行くね。上着今度返すから」
「ああ、いつでも良い」
「じゃあ…」
「そうだ、なまえ」
「なに?」
「ピンク色が似合うな。可愛らしいと思う」


下着の色を褒められたのは初めてだ。いや、そういう事じゃない。色んな意味で顔から火が出そうになった。可愛いとか、そんなさらっと言わないでよ。しかも下着って、褒めるところ間違ってるよ。でも嬉しい自分がいる。「じゃあ、俺はもう行く」と言って私を取り残してスタスタと歩いて行く斬島。なぜか佐疫が申し訳なさそうな顔をして、「ごめんね、悪気はないんだ。何でも本当の事を言っちゃうんだよ」と謝って斬島を追いかけて行ってしまった。ちょっと待って、本当の事言っちゃうって…。頭がかっと熱くなり、再びしゃがみ込んで「何なの…」と一人呟いて頭を抱えた。




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ストレートな言動の方向性間違った気が
リクの斬島でした


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