Main



※この話は某有名掲示板の話しを人物や話口調など変えたものです
詳しい改編や元ネタURLは解説の方に記載してます



今回も俺の人生2人目の「おそらく本当にみえるひと」ラムダがらみの事件だ。

コトネがリーフに連絡して、会おうと言ったそうで。
思えば、学生時代からリーフはコトネを(というかコトネについてるモノを)避け気味だったが、コトネはリーフを気に入ってたようだった。
去年から何だかんだでリーフがコトネと関わってるから、このまま友達付き合いを復活したい(現在進行形)んじゃないかと思う。

リーフは断る理由もなく、先の件で引け目があったのでOKしたものの、コトネと2人きりはどうしても気が進まず、俺を呼び出した次第だ。
引け目とは、怨霊塊憑男カズナリの家に熟睡中のコトネが連れ込まれた段階で反対しなかったことだそうだ。
リーフ曰く、前回は本当にとんでもなかったらしい。
「井戸の時は逃げたら済んだけど、あの時はラムダさんが逃げ道を塞いでたから……。ドアが揺れ始めてからずっと、止めなきゃいけなかったんじゃないかって思って、もしコトネのアレが負けたらコトネはどうなるの?って凄く怖かった」と。

当日、コトネと待ち合わせ場所で会った時、すでにリーフが微妙な顔してた。
ファミレスに入ると、コトネが「コレ見てくださいっ」と鞄から何か出した。
コンパクト?ってのか?丸い平たい2つ折りで、内側は両面が鏡の奴。
何か古そうな奴。金属っぽい質感で、凄く古っぽい感じ。
横のリーフは、また表情が固まってる。
「アンティークなんですよ!。この前ほら、肝試しなのに現地到着前に私が寝ちゃったでしょリーフとグリーンさんがヒビキくんに連絡してくれて」
コトネは、あの後シルバーの呼び出しで“肝試しスポットを教えてくれた人”として、ラムダに会ったそうだった。
「ラムダさん、おかしな場所に行かせたせいで倒れたんじゃないかって謝ってくれて、お詫びにってコレくれたんです!結構よくて気に入ってるんだけど、安いものじゃないみたいで。お返しにお菓子でも送ろうかと思ってるんですよー!」

適当に喋ってコトネを返した後、リーフが即効でラムダに連絡して、数日後に会った。
現れたラムダは、俺らがコトネに会ったと聞いた段階で何やら察してたようだった。
リーフが「何考えてんですか!」と怒鳴ると、ラムダはフフンと鼻で笑って言った。
「いいアイディアだと思わない?散らばらないよ、あれ」
……呪いの部屋と同じように呪いのグッズも現実に存在することを、改めて知らされました。
いや、指輪の一件で既に判っていたようにも思うが、古物やリサイクル品に稀にでもその類のものがあると思うとやはり怖い。

件のコンパクト、確かにモノは良いがラムダは一銭も払ってないそうです。
むしろ金をやるから黙って引き取ってくれと泣かれた代物だと。
前回の話の怨霊塊憑き男カズナリのためにラムダが情報収集してる間、ラムダが「みえるひと」だという情報も、広く垂れ流しだったそうで、お払いしてくれと妙なものを持ち込んでくる奴は割りと居たと。
ラムダは、何も憑いてない場合はそう教えてやり、たまに出てくるホンモノについては小遣い稼ぎのネタにしていたと言ってました。
金目の物で自力で片付くものは引き取り(そして片付けて売り)、奉納で済むものは処理方法を助言したりして、ポツポツ稼いでたのだそうな。

「あ、この話し、若には内緒にしてくれよな!それにもちろん命は惜しいから、手に負えないのはムリだっつって断ったよ。あの鏡はね、間違えた。鏡から離れないんだから最悪本体ごとおっぽり出せば済むわけで、リスクも小さいと思ったんだけどね。甘かったねー。だからコトネさんに頼んじゃった」
ラムダは、からからと笑って言った。
ラムダに聞いたところでは、そのコンパクト?は持ち主の不在を許さないのだとか。
捨てようとすると邪魔が入って、どうしても捨てられなかったそうです。
憑いてるモノはラムダの手に余るから長く持ってたくないし、かと言って他人に譲るのも良心が痛むので、持て余してた一品だと。
「本体から他所にはいけない奴だし、コトネさんのアレと勝負できるレベルじゃないから問題なし。コトネさん、寝なかったっしょ?」
コトネが例のコンパクトをしばらく愛用してくれたら擦り切れて掠れて消え去ってくれるだろう、と言うのがラムダの言い分でした。

で、実はここまでが前フリ。


再度俺にリーフから連絡が来たのが、確か5月下旬。
……コトネ、コンパクトを手放してしまったと。
ラムダにも連絡したら、あの飄々としたラムダがあわくってたそうです。
俺も巻き込まれで付き合い、3人で次の所有者を訪ねました。

リーフがコトネに聞いたところだと、友人(学生時代のではない、俺達とは面識なし)に見せたら、凄く良い品だと言われ羨ましがられ、ちょっとだけ貸して欲しいと言うから貸したら返してくれない、と。
「携帯に連絡してもメールしても返事がないの」
と言った時のリーフの表情を誤解したようで
「貰い物なのに申し訳ない」とコトネは凹んでいたそうです。

……リーフが苦労してコトネから聞きだした名前その他の情報を頼りに俺達がコトネ友人宅を探し当てた時、コトネ友人は離婚前提の別居だとかで、家には居ませんでした。
ご主人だけいて、俺達の目的が奥さんに貸したコンパクトだと言うと、出てきて暗い顔で言葉少なくモノを渡してくれました。
そのとき、両足首に包帯を巻いていた彼の右袖口からちらりと、手首より少しだけ上辺りに何か見えました。

モノを引き取りコトネ友人宅を辞して、俺はリーフとラムダに確認しました。
…見間違いじゃなかったです。ヒトの歯型だった、と2人とも言いました。
その後の2人の会話は、以下の通り。
「奥さんの歯型だよね、アレ」
「だろうね。……やっちゃったねえ」
さすがのラムダが、真っ青に青ざめていました。
「ラムダさんのせいだよ」
「うん、俺のせい。……呪いのコンパクトだよって言っといたから、コトネさん離さないと思ってた」
「勝手なこと言わないで下さい。大体、高価なものなら泥棒にあうことだって考えられるでしょ。何でそんないい加減なことするんですか」
リーフが物凄く刺々しい口調で言ってラムダが黙り込み、気まずい気分で俺らはラムダと別れた。

例のコンパクトは、ラムダが持ち帰ることになった。
もっともリーフ曰く、もうコンパクトには何もないそうでした。
コトネが愛用していた数ヶ月で削り取られ磨り減り続けたモノの、最後っ屁と言うか断末魔と言うか、そういうものをコトネ友人は受けてしまったのだと思う、と。

その後、俺が6月にラムダと飲んだとき(カズナリの件以降、何となく付き合いしてる)に聞いたところでは、まっさらになった例のコンパクトを売り払った金に色をつけて、例のコトネ友人である女性に送金したそうだ。
送金先は自腹で調べたそうで、いつも能天気に見えるコイツでもあの一件はこたえたんだな、と感じた。

また最後になったが、そのコンパクトに憑いてたものの正体について。
コトネのコンパクト紛失以前、リーフがラムダを呼び出した際に少し聞きました。
……俺にはよく判らなかった話だけど、ラムダが“みた”ところでは、
『4つ足の哺乳類に昆虫の羽根がある』生き物がしがみ付いてたとか。
リーフには姿は見えなかったが(能力の差か、コトネが居たことによる影響かは解らないと)、ぶんぶんと背筋の寒い羽音が絡まりついてたと。

その中では1人だけみえない俺が、
「哺乳類に虫の羽って何?異次元の生き物とか?」
と聞いたら、リーフとラムダがまるで狙ったようなタイミングでバッと目をそらしたのが印象的でした。
リーフは黙ってましたが、ラムダはハハハとわざとらしく笑い、
「……人間が、恨みとか呪いだけで精神のカタチまで捻じ曲げてあんなモノになれるってのが怖いぜ。本当に」と言いました。
正直、俺はグロいものを見る力が無くてよかったです。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -