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※この話は某有名掲示板の話しを人物や話口調など変えたものです
詳しい改編や元ネタURLは解説の方に記載してます



その時、俺は地方大学の学生で、同じサークルの後輩とよく飲んでた。
俺の幼馴染レッドと、後輩のヒビキとシルバーっていう男2人。
そして後輩の女2人の計6人がいつものメンバー。
あとはたまにノリで来たり来なかったりする奴らがいて、人数は違ったがこの6人はお決まりのメンバーだった。
よく一人暮らしのヒビキの部屋で集まって飲んでたんだが、そのうちの1人でいつも怪談したがる女の子がいた。
もう一人の後輩は逆に決まって嫌な顔してて、リーフって名前。
リーフは俺とかなり仲良かった。

怪談好きな方はコトネっていうんだが、コトネも別に電波とかじゃなくい。
怪談も体験談はなくて、それこそこの某有名掲示板のオカルトスレで面白い話を仕込んできてんじゃないか、 みたいな怖い話をする子で、本当は幽霊とか信じてなさそうだった。

むしろリーフの方が「見えるんだ」と言ってて、リーフはいつもコトネを避けてる感じだった。
2人で遊ぶとかは絶対ないし、グループでも距離を開けたがってる雰囲気で、 俺とあと一人、リーフの「見える」を聞いて信じてたシルバーは、
本当に霊感があったら遊びで怪談するなんて嫌なのかもしれない、と思ってた。

そんな夏休みのある日、お決まりのメンバーでホウエン地方へと旅行に来ていたときのことだ。
1日中遊び疲れてたにも関わらず、修学旅行気分でご機嫌な俺達はホテルの一室で酒を飲みながら話してた。
すると話の流れで、いったいどこから仕入れてきたのか、コトネと仲のいいヒビキが恐怖スポットの話を持ち出してきた。
車で30分くらいで行ける場所にあるそうで、酒が入っていたということもあり、コトネも面白がって、 その場で肝だめしツアー決定。

先に部屋に戻っていたリーフも呼び出そうってことになって、俺はリーフに電話した。
俺自身は行く気だったけどリーフは来ないだろうな、と思い、
「これから遺跡のはずれにある家に行くってことになったんだ。ただ、肝試しだし他にも来ない奴いると思うし」
と言った。そしたら、リーフは遮るように
「それって、何か大きな空き家のことですか?その辺りで肝試しって」
「あ、そう。その家の裏に何かあるらしいから」
「………よした方が良いと思います。ってか、やめときません?誰かの部屋で飲んで怪談したらいいじゃないですか、わざわざ行かなくても」
よりによってリーフに怪談話を進められて少し驚いたが、ヒビキたちは既にノリノリで準備中。
「いや……みんな行く気だし。リーフは気が進まないなら、今回は外していいと思うけど」
するとリーフは少し黙って、
「………コトネちゃんは行くんですか?」
「行くよ。一番、やる気満々だし」
「じゃあ、レッドさんは?」
「レッド?アイツはもう寝てる。起こすの面倒だし、置いてくと思うぜ」
「……そうなんだ……じゃ、私も行きます、ちょっと待っててください」
たまげたことに、リーフは本当に来てコトネと一緒に車に乗った。
一応軽く声をかけたがレッドは起きず、結局5人で、レンタカーに乗って出発した。
運転は酒が飲めないシルバーがしてくれた。

コトネは少し大雑把なとこがあって、リーフに距離置かれてるのもあんまり解ってないっぽく、
車中で初めは面白そうにお喋りし続けてたが、すぐに欠伸をし始めた。
「はしゃぎすぎて疲れちゃったのかなー。眠い〜」
 眠そうに呟くコトネに、リーフが
「寝てなよ。着いたら起こしたげる」
「ありがと。ごめん、少しだけ寝る」
コトネは運転してる奴に断ってうとうとし始め、リーフは黙って窓の外を見てた。

で。着いたときもコトネは起きなくて、もはや完全に熟睡。てか爆睡。
「寝かしとく?」って俺らが顔を見合わせたら、リーフが
「連れてきましょう。後で怒りますよ、置いてったら」
ってコトネを担ぎ起こして、強引に車から出したんだよ。
仕方ないからヒビキが背負ってやったんだけど、リーフはコトネの手を掴んでて、
他の車の奴らが降りてきたら、一番先頭に立って歩いてった。

そこにあった古い家は、普通に不気味な空き家で、皆は結構もりあがって、
「うわー」とか言ってた。コトネは起きないまま。リーフはコトネの手を掴んだまま。
いよいよ本番で、家の後ろに回ったら、何かぽつんと古井戸みたいなもんがあった。
近寄ってのぞいて見ると、乾いた井戸の中に、ちっちゃな和式の人形の家みたいなもんが見えた。
「何だ...?」って俺が身を乗り出したのと、リーフが
「さがってっ!」て叫んだのが同時だった。
俺がびびって身体ひっこめた、そのすぐ後に、
「カシャ……」だか「ズシャ……」だか、何か金属っぽいような小さな音がした。
「下がって!下がって!こっち来てっ!」
リーフが喚き出すまでもなく、もう何か、すごい嫌な感じが一杯だった。
カシャカシャ、ガシャズシャ、て変なジャリジャリした音が、 しかもどんどん増えながら来るんだよ。
その訳解らん井戸の中から、

こ っ ち に む か っ て 。



もう逃げたいのに身体が動かなくて、横見たらいつも冷静なはずのシルバーまで動けないようで息を飲んでる。
音は近づいてきて、姿は見えないけど絶対に何か居たと思う。
「グリーンさん、もっとこっち来て!!!!」
リーフが怒鳴りながら俺の手を掴んで、何かを掴ませた。
俺が掴んだのを見たリーフは、今度はシルバーにも同じようにまた何かをつかませてる。
てか。よく見たら、俺が掴んでるのはコトネの右足。さっきの奴が掴んだのはコトネの左手。
コトネの右手はリーフが掴んでる。ヒビキは相変わらずコトネをおぶってる。リーフはコトネから手を離さずに
必死に他の仲間を引っ張り寄せてた。
その後のことは、色々とよく解らなかった。
ただハッキリ覚えてるのは、気がついたら、目の前に何かがいたこと。
白いんだかグレーなんだか透明なんだか、煙なんだか人影なんだか、何か良く解らない「何か」が俺らの前に居た。
ちょうどその辺りから、ガシャガシャガシャガシャガシャ、ズシャズシャズシャズシャズシャ、みたいな金属音が耳一杯に響いてきてた。
いや、こう書くとその煙みたいなもんが金属音立ててたみたいだけど、そうじゃなかった。
俺らは「煙か人影みたいなもん」の背中を見てて、それが「見えない金属音の奴」とぶつかり合って止めてるんだって、そういう光景だった。

「グリーンさん、ヒビキくん、シルバー君、動ける?逃げよ!!速く逃げようよ!」
リーフが叫んで、俺らは必死で身体を動かして車へ向かって、何とか乗り込んで逃げ出した。
シルバーがハンドルを握る車の中で俺が振り返ったとき、もう何も見えなかったけど、金属音だけは結構長いこと耳に残ってた。

その後。結局帰り着くまで熟睡こいてたコトネに「何も出なかったから起こさなかった」と
説明してホテルの部屋へ戻らせた後、皆で震えながら明け方まで飲んだ。

それから帰宅まで、特に何事もなく旅行は終了。
帰宅後にリーフを捕まえて経緯を聞いたら、げんなりした顔でいろいろ教えてくれた。
あの古井戸がマジで危ない本物だったのは予想通り。
「家の正面に居る分には大丈夫だけど、裏に回って井戸まで見たらダメなんです」
だそうだった。
問題は俺らを助けてくれた妙な影なんだけど、リーフは凄い嫌な顔で、
「あれはコトネちゃんの……何ていうか、ついてるものなんです」と言った。
リーフがコトネを避けてたのは、嫌いだからじゃないそうだった。
ただ、コトネに纏わりついてるものがいて、それが凄く強くて薄気味悪いものだったんだと。
で、初めはコトネに取りついてる霊か、と考えたがどうしても違和感があって。
ある日、コトネから出てくる『それ』を見て、不意に気づいたんだそうだ。
『それ』は『コトネの中』にいるんだと。
「……コトネちゃんがあれのいる世界に繋がってて出入り口になってるのか、それともコトネちゃん自体があれの棲む場所なのか、どっちかだと思います」
リーフもよくは解らないようで、とにかくそれはコトネから出てきてまた戻っていくんだと言っていた。他の霊的なものは全部コトネを避けるそうで、多分あれのせいで近寄れないんだとも。

「あれは私たちを守ったんじゃないですし、コトネちゃんのことも大事だとかじゃないと思います。ただ、ドアとか家が壊れたら困るでしょ。だから」
何とかした方がいいのか、と思っても、コトネは本気では霊を信じていないようだったし、普通の霊じゃないから払えるとも思えなかった。
だから放っておいたけど、自分は近寄りたくなかったんだ、とリーフは言った。
ただ、『それ』がコトネを深刻な危険から守っているのは知っていた。
そして、あの日俺らが本当に危ない場所に行くと感じて、止められないならコトネの中に居る『それ』に守ってもらうしかない、と考えてついてきたのだという。
「あれが守るのはコトネちゃんだけだからです。少しでも離れたら、井戸から来てた方に憑かれて人生終わってたと思います。グリーンさんも、他のみんなも」
言われて背筋が寒くなったのを紛らそうとして、
「……でも、何だろうな?コトネについてるのって。結構よくないか?結局守ってくれるんなら」
そう言ったら、リーフは羨むような蔑むような複雑な眼を向けてきた。
「あのですね、グリーンさん。お腹に住みついた寄生虫が孵化するまでは守ってくれるって言ったら、 それって嬉しいですか?」
「……」
……何となく、言いたいことが解った。
コトネに巣くってるモノは、とにかく自分だけの都合でコトネの中に居座ったり顔を出したり
するわけで、ひょっとしたらコトネから何かを奪ってるのかもしれないわけで。
いつか自分の都合でコトネをぶち破って出て行ったりするかもしれないわけで、
その時には周りにも影響するかもしれないわけで、しかもコトネは本気で何ひとつ全く気づいていないわけで。
「放っとくしかないです」
そう言ってリーフはため息をついた。
「井戸から出てきた方も、凄かった。神様が最悪の状態になったみたいな感じだった。
並みの霊能者とかじゃ負けちゃうだろうって思うくらいの奴だった。
あんなのと渡り合える、コトネちゃんの『あれ』も、どうせ何やってもどうもできない」
それから時間が経って、俺もリーフもコトネも社会人。
ふと思い出したんで、投下しました。
ちなみに、理由はコトネから連絡あったから。
結婚した上に子供も生まれて元気にやってるそうです。
リーフに電話してそう言ったら、
「コトネちゃんが寿命になるまで、あれが大人しくしててくれたら、それが一番いいです」
と言ってたところからして、リーフは、コトネが今もあれを背負ってると確信してるみたいだ。



余談だが、コトネは怪談と共に時々、
「本当の霊体験がしてみたい!一度もないんだよね」
と言っていました。
上の話の前後にも肝試しやらコックリさん系の遊びやらを試してみていた
ようですが、全敗らしかったです。

後にリーフが言ったところでは、
「無理だと思いますよ。アレはコトネちゃん本人には見えないようになってるみたいだし、 他の霊は、霊感のあるなし以前に、全く何もコトネちゃんに近づかないから。
井戸のあの音はちょっと並じゃなかったから、近づこうとしたんだろうけど。
だからコトネちゃんのアレも、コトネちゃんを眠らせて全力でやったんじゃないのかなあ。これは想像ですけど」
そう言えば、あの夜はリーフがあんだけ叫んだのにコトネは眼を覚ます気配もなかったな。

なお俺は、それより前にコトネが雑談で、
「家で一人でコックリさん(みたいな何か心霊系の遊び)したけど、反応ないし、眠くなってそのまま昼寝しちゃった。あーゆーのって中々、成功しないね」
と言うのを聞いた記憶があります。
……いや、成功してたんだったりして……というか、だとしたら、
その時は何が来てたんだか……





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