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正直なところ、一目惚れだったかもしれない。





「へぇー!それじゃあ、そのエルフーンがメイさんの切り札なんだね!」

「そうなの!この子がサポートしてくれるから、他の子たちが気兼ねなくバトルに集中できるの!」


メイさんとの会話は大盛り上がりだった。

ニコニコと嬉しそうにエルフーンに話しかけるメイさん、その笑顔に僕もつられて笑う。

すごく、綺麗だと思った。

その様子はおよそイッシュ地方でチャンピョンを勤め上げる少女とは思えないほどだ。
幸せそうに最愛のポケモンたちについて話す笑顔に、ドキッとする。

メイさんは、よっぽどポケモンたちのことがすきなんだ。


「…テンマくん?」


無意識のうちにじっと見つめてしまっていたらしい。

きょとん、と僕の様子を伺うメイさん。

その表情ですら可愛いと思うのだから、重症かもしれない。

落ち着けテツ、僕と彼女は今日が初対面だぞ!


「ううん、なんでもないよ!ハハハ」


誤魔化すように慌てて笑うと、メイさんも笑ってくれた。

可愛いなぁ…、じゃなくて!

彼女は共演者なんだから、やましい気持ちなんて持っちゃいけないだろ!


「失礼します!テンマ、メイちゃん。30分前になったから宣伝と打ち合わせよろしく」

「あ、はい!」

「よろしくお願いします!」


マネージャーが控え室に入って来て、僕達は慌てて準備に取り掛かる。

本番30分前、ということは1時間近く話していた事になる。

メイさんとの会話した時間は、あっという間で、すごく楽しかった。

緊張するし、目が合うだけでなんだか恥ずかしいようなくすぐったいような、不思議な気持ちになる。

でも今から始まるのは、番組だ。

プロとして集中しないと…!


「それじゃあ、まずテンマくんとメイさんで…」


現場に行くと、生放送中に流す宣伝の台詞を渡される。

ちらりと彼女の様子を伺えば、真剣な表情でスタッフの話しに耳を傾けていた。


『このあと、8時からは恐怖のストレンジャーハウスレポート!』
『お楽しみにっ!』

たった5秒程度の短い台詞だが、初めての共演だ。

息を合わせなければいけない。


「大丈夫そうか?」

「はい!」

「おかげさまで、すっかりテンマさんと意気投合して…!」

「今日のリポートも、上手く行きそうです!」

「よっしゃ、がんばれよ!」


マネージャーから喝を入れてもらって、台本に眼を通す。

メイさんと練習をしていると、スタッフの人から声がかかった。

CMを撮るらしい。

「切り替えまで10秒前―、7、6、5、…」





「――それでスタッフが入った時の結果から、だいたい放送時間の30分でハウスの中は攻略できると予想してます」

無事に宣伝も終了し、最終確認に入る。

事前にPDさんが行った確認では、20分そこそこで帰って来たらしい。

残念なことに幽霊のたぐいは現れなかったらしいが、なかなかのリアクションがとれたみたいだ。

ドッキリ番組としては、役割を果たしているだろう。

「野生のポケモンが出現しないように、メイさんにはゴールドスプレーを使用してもらいます。中の仕掛けとしてはスタッフの用意した人工的なものと、ポケモン達による悪戯程度のものがあります。視聴者参加型で一緒にお2人が解いて行くクイズについては、放送が開始されてからお渡しして…」

本日だけでも何度目か分からないスタッフの説明を、右から左へと聞き流しながら、イメージを膨らませる。

テツが、テンマへと変わる瞬間。

…僕は、アイドルのテンマだ。


「まぁ、家具とかで道作ってあるから大丈夫だよ。下の階に置いてある呪いのお札を取ってくるだけだから」


気楽にね。

そう言って、マネージャーはカメラの邪魔にならない場所へと向かった。


「ポジション確認お願いします」

「カメラ、スタンバイOKです」

「マイクチェックします」


カメラの前にたち、中継が繋がるのを待つ。

いよいよ、本番だ。


「がんばろうね、テンマくん!」

「よろしくね、メイさん!」

「中継入ります、10秒前!7!6!5!…」


『みなさんこんばんは!テンマです!今日はヤマジタウンのはずれにあるストレンジャーハウスに来ています!なんとゲストには、イッシュ地方現チャンピオンのメイさんも来てくれています!』

『こんばんは、メイです!今日はよろしくお願いします!』

『よろしくお願いします!さて、僕たちはこれから、このストレンジャーハウスへの探索を行うんですけど…。幽霊屋敷と噂されるこの家で、ちゃんとロケが出来るか正直心配です、ハハ!』

『実はわたしもなんです。外から見ても、大迫力ですね…』

『雰囲気がありますよね!…あ、っと!ここで、指令が届きました!』

『持って来てくれたのは、ぬいぐるみポケモンのジュペッタくんですね!今日は彼と一緒に、探索していきます!』

『ジュッタ!』

『皆さんと一緒に、この指令に書いてある謎を解いて、ストレンジャーハウスを調べて行きます!パソコンから番組の特設サイトにアクセスして、一緒に謎を解いてください!』

『1番最初に全ての謎を解いた人には、豪華賞品をプレゼントします!小窓放送以外にも、パソコンからわたしたちの様子をリアルタイムで確認できます!一生懸命探索して、出来るだけヒントを見つけるので、応援してくださいねー!』

『それじゃあ早速、指令を見て行きましょう。えっと、― 115が138になるものを探せ ― い、いきなり難しい指令です』

『その上には、B F Rって書いてありますね』

『そしてBには赤ペンで○が付けられてます。…どういう意味なんでしょう?』

『これだけだと、全然わかんないですね』

『…ずっとここにいても話が進まないですし、中に入りましょうか』

『うぅ、いよいよですか。何も起きなきゃいいんですけど…』

『大丈夫ですよ!何かあったら、僕が絶対にメイさんを守って見せますから!』

『ペッタ!』

『ハハッ、ジュぺッタもメイさんを守ってくれるみたいです』

『ジュペ!』

『ふふ、ありがとうございます。テンマさん、ジュぺッタ!チャンピオンとして、弱気なところを見せるわけにはいきません!さぁ、行きましょう!』

『はい!…それじゃあ、ここからは自動追跡の小型カメラのみの映像になります!…行ってきます!』




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