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※この話は某有名掲示板の話しを元に創作したもので、一部引用も含みます
  元ネタURLは解説の方に記載してます


------------ キリトリ ------------



次の日は、リーフが朝から見舞いに来てくれた。

「レッドくん、あのね」

彼女は唐突にそう切り出す。
思いつめたような、真剣な様子を見て彼女を伺えば、どうにもこちらを見ようとしない。
それどころか、やけにそわそわした様子で落ち着かない。
いうなれば、怖がっているような、そんな感じ。

「どうしたの?」
「うん、あのね、ごめんね、わたしずっと、言えなくて…」

申し訳なさそうに顔をしかめる。
何だ、何か隠し事でもしてたのか?

「…レッドくん、その、怒らないでね?あのね、わたし、すぐ、レッドくんはここから出た方がいいと思うの」
「…?どういう意味?」
「あ、ごめんなさい。いきなりこんなこと言っても、わかんないよね。あのね、わたし、ずっと黙ってたんだけど…。だって、言ってもきっと信じてくれないし、変な子って思われて嫌われちゃうの嫌だし…」

遠まわしに、歯切れの悪い口調でだらだらと何か言いわけをするリーフ。
小さい頃からずっとこんな感じだったし、ボクはいい加減なれたからイライラなんてしないけど、グリーンがこの場にいたら「おどおどすんな!」ってどやされることろだっただろうな。

「大丈夫だよ、リーフ。ボクがリーフのこと嫌いになるなんて、ありえないから。とりあえず、言ってみて?」
「うん、あの、あのね…!わたし、その、み、見えるの…」
「……見えるって何が?」
「レッドくん、と、いるのが」

レッドくんといるのが。
そう言って、リーフは口を閉ざした。
いやいやちょっと待って。
なにかやばいのに手を出したとは思ってたけど、え?いるの?何が?やつが?いま、ここに?

ここ数日全くあいつを見ていなかっただけに、急激なパニックに陥る。
リーフはこんなことでからかうような子ではないし、むしろ見えているのならここ数日会うたびにリーフが視線すら合わせずに怯えるようにボクから距離を取っていた理由も納得できる。

「えっと、いるってのは、…あれだよね?」
「う、うん。目を合わせちゃうと、ばれちゃうから、何してるかはっきりわかんないけど…。ぐ、ぐるぐる、まわってる」
「あー…、そっか」

なんだかもうどうでもよくなってきて、見えないならいいや、とかわけのわからない思考で頭が埋まった。
見えるなら怖いけど、見えないなら、怖くない。
ゴーストタイプのポケモンみたいなもんだ。うん、そう思おう。

「それでね、わたし、レッドくんのこと、なんとかしたいと思って…。それで、来ました」
「へ?」
「うまくいくかわかんないけど、わたし、がんばるから。…だから、わたしにその人たちを説得させてください」

最後の方はいくらか力強く、リーフは言った。
いつになく真剣な視線に、思考が止まる。
が、そこで1つの違和感が残った。
その人たち?その人たちってなんだ?
あの女1人じゃないのか?

「え、待って、リーフ。リーフが見てるのって、1人じゃないの?」
「え、ううん。ちがうよ…、たくさん、ぐるぐるしてる」
「そっか、たくさんぐるぐるしてるか…」

ぐるぐるってなんだ?
そもそも先日の体験をボクが話したのはグリーンだけで、もしかしてリーフはどんな体験をしたか知らないんじゃないか?

「女は?」
「へ?」
「女。いるでしょ、髪が長い人」
「………ううん、いないよ」

ちょっと、本気で訳が分からなくなってきた。
話を整理するために、グリーンを召喚する。
1コールでポケギアに出たあいつは、「すぐ行く」とだけ言ってかけつけてくれた。
呼び出しておいてなんだけど、トキワジム暇だな、大丈夫?

「グリーンくん…」
「よう。…レッドに話したってマジ?」
「うん。やっぱり、怖いけど、出来る限りのことしようと思って」

グリーンから話を聞いたところによると、どうやらリーフはボクが倒れたその日、グリーンに「見える」ことを打ち明けていたらしい。
小さいころから怖い話を嫌がったりしていたのは、そういう話をするとまわりに「寄ってくる」かららしく、かといって肝試しとかに付いてくるのは、寄って来たそれをボクたちから守るためだったらしい。

「で、コイツが言うには、お前の回りに子供が10人くらいでぐるぐる円になってまわってんだと」

グリーンが到着したとたん、限界だったのか彼の影に隠れてボクから距離を取るリーフ。
そういえば昨日もその前もそんなふうに誰かの後ろに隠れてたっけ。
理由がわかっているとはいえ、正直ちょっと傷つく。

「まるで、かごめあそびしてるみたい」

リーフがそう言った瞬間、ぞわりと寒気がした。
かごめ遊び?
昨日の夢がフラッシュバックする。
どこからかかごめあそびの声が聞こえてくるような気さえしてきた。
首が、かゆい。

「おいレッド、大丈夫か?」

ふらり、と崩れたボクにグリーンが駆け寄る。
嫌だ、かゆい、いたい。

「レッドくん、手!手を、握って!」

いいから早く!と半強制的にリーフに手を掴まれる。
瞬間、襲いかかる急激な眠気。

「な、ん……」

なんで、と疑問の言葉を発することすら出来ず、ボクはそのまま眠りに付いた。



目が覚めたら、今度は知らない場所だった。
畳の上に直接寝かされている。

「ん…」

なぜか体が重くて動かなくって、目だけ動かして当たりを伺う。
ずいぶん天井が高い、どうやらどこかの和室なようだ。
人の気配がする。

「レッドくん、起きたんだね」

右側から、リーフの声がした。
相変わらず体は動かなくって、返事だけでもと思ったけど声も出ない。

「あ、いいの。大丈夫。近かったからね、いま、はじいてるの」

はじいてる?何を?
そんな疑問を持っていたら、すっと人の近づく音がした。
ボクの横に、リーフが正座する。

「体、動かなくって、しんどいよね、ごめんね。でも、あのまま近くにいたら、レッドくん耐えられないと思って…。ここに運んじゃった。勝手にごめんね、でも、ここならわたしの方が強くなれるから」

リーフの手が、ゆっくりとボクの目を覆う。
手で目隠しされて、暗闇に包まれたが、なぜかそれが心地よくて安心した。
自然と瞼が落ちる。

「でも、もう限界みたい。レッドくんにもちゃんと説明しなきゃいけないし、ちょっと、戻すね。辛いだろうけど、がんばって」

戻す、という言葉に一瞬動かないはずの体が強張った。
はっきりとは口にしないけど、 ボクにも言わんとするところはなんとなくわかるわけで。
あぁ、アイツがボクのところへ戻ってくるのかと、心が押しつぶされそうになった。

再び、急激な眠気に襲われる。
ぐわん、ぐわん、と揺れる世界の中で、ボクは再び意識を手放した。


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