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※この話は某有名掲示板の話しを元に創作したもので、一部引用も含みます
  元ネタURLは解説の方に記載してます


------------ キリトリ ------------



日が暮れかける頃、リーフ はジムに来てくれた。
リーフが来る前にも、グリーンやジムトレのみんなは手当たり次第に心当たりを当たってくれたのだが、エンジュのマツバが手に負えないといったものを対処できるなんていう人は現れなかった。
ボクはというと、情けない話だが、自分のためにほうぼう手を尽くしてくれる人を尻目に、ただ怯えているだけだった。
そのうち、どうも首の付け根辺りが熱くなってきた。
伝わりにくいかと思うが、例えるなら、首に紐を巻き付けられて、左右にずらされているような感じだ。
首に手をやって寒気がした。熱い。首だけ熱い。しかもヒリヒリしはじめた。
どうも発疹のようなモノがあるようだった。
ブランケットを頭からすっぽりかぶり、とにかくリーフが来るのを待った。

「レッドくん、それ…!」

リーフと会ってすぐ、彼女はそういって手で口を覆った。
視線は首のあたりにあって、嫌な予感しかしない。
衝動的に洗面所の方へ走り、鏡を見た。奴が来るかもとか考えなかったな…、何故か。
首の回り付け根の部分は、縄でも巻かれているかのように見事に赤い線が出来ていた。
近づいてみると、細かな発疹がびっしり浮き上がっていた。
さすがに小刻みに身体が震えてきた。
何も考えずに、リーフにも一言も返事をせずに、ただ南無阿弥陀仏を繰り返した。
そうする他、何も出来なかった。
心配したグリーンが、「どうした!!」と怒鳴りながら走って来た。
隣でわあ、と泣き崩れる声がした。リーフの声だ。
逃げ場はないと、恐ろしい事になってしまっていると、この時やっと理解した…。

次に目覚めたときは、病院いた。
あの直後突然意識を失ったボクは、その場で倒れてしまったらしい。
精神的に参ったからか、それか何かしらアイツが起こしたものなのかは分からなかったが、2日間高熱に悩まされた。
首から異常なほど汗をかき、2日目の昼には血が滲み始めた。
3日目の朝には首からの血は止まっていた。元々滲む程度だったせいかもしれない。
熱も微熱くらいまで下がり、少しは落ち着いた。
ただ、首の回りに異常な痒さが感じられた。
チクチクと痛くて痒い。枕や布団、タオルなどが触れると、鋭い小さな痛みが走る。
血が出ていたから、瘡蓋が出来て痒いのかと思い、意識して触らないようにした。
布団にもぐり、夕方まで気にしないように心掛けたが、トイレに行った時にどうしても気になって鏡を見た。
鏡なんて見たくもないのに、どうしても自分に起きてる事を、この目で確認しないと気が済まなかった。
鏡は見たこともない状況を写していた。
首の赤みは完全に引いていた。その代わり、発疹が大きくなっていた。
今でも思い出す度に鳥肌が立つほど気持ち悪いが、敢えて細かな描写をさせて欲しい。気を悪くしないで。
元々首の回りの線は、太さが1cmくらいだった。
そこが真っ赤になり、元々かなり色白なボクの肌との対比で、正しく赤い紐が巻かれているように見えていた。
これが3日前の事。
目の前の鏡に映るその部分には、膿が溜まっていた。
…いや、正確じゃないな。

正確には、赤い線を作っていた発疹には膿が溜まっていて、
まるで特大のニキビがひしめき合っているようだった。
そのほとんどが膿を滲ませていて、あまりにおぞましくて気持ちが悪くなり、その場で吐いた。
真水で首を洗い、処方されていた軟膏をもう1度塗り、布団に戻った。
何も考えられなかった。唯一、『何でボクなんだ』って憤りだけだった。

「よぉレッド、生きてるか?」

縁起でもない言葉を口にしながら、グリーンが見舞いに来てくれた。
その後ろにはリーフの姿、なんでもボクを心配して仕事を早退してきてくれたらしい。

「ごめんね、ピカチュウたちも連れてこようと思ったんだけど…。まだ、無理だと思って」

熱が引かないから、ピカチュウたちに心配かけてしまうということだろうか。
無理という言葉に少し疑問を持ちながらも、対して気にせず、「ありがとう」と伝える。
くぐもった表情のまま、リーフはひかえめに首を振り、もう1度「ごめんね」と呟いた。

その後3人で他愛もない話をする。
カスミがまた新しい彼氏を見つけた、だとか、キョウが娘可愛さに中のいい男友達を影でおどしてまわってるとか、そんなこと。
そんな普通の話しが、その時のボクにはたまらなく幸せだった。
日常を感じられる気がしたのだ。

ここ数日、精神的にもまいっていてほとんど寝ていなかったせいだろう。
グリーンとリーフとのおだやかな会話に安心したのか、急に眠気がおそってきた。
こいつらの前で遠慮するつもりも毛頭なく、せっかくお見舞いに来てくれているのに悪いが、少し眠らせてもらうことにした。
グリーンやリーフはそんなボクの様子をみて、「起きるまでここでだべってるよ」と声をかけてくれた。
なんだかその一言にすごく安心して、瞼を閉じる。

そして、夢を見た。
小さな子供たちが、10人くらい、手をつないで円をつくっている。
その円は、1人の女性を取り囲むようにつくられていて、子供たちはぐるぐるとその女性の回りを回っている。
囲まれた女性は、体操座りでうずくまっており、顔が見えない。
ふと、唄が聞こえ出した。

「かーぁごーめ、かーごーめー、かーごのなーかのとーりーは、いーついーつ、でーやーるー…」

かごめだ。ボクも小さい頃よく遊んだやつ。
なんでこんな夢を見るのかわからなかった。
この夢がアイツと関わっているのか分からなかったが、なんだかすごく気持ちが悪かった。

「よーあーけーの、ばーんーにー、つーるとかーめがすーべぇったー」

目を反らしたいのに、その光景から反らせない。
焦点はただじっと、女の人にあった。

「うしろのしょーめん、だーぁれ?」

ぐるん。
突然、女の人の顔がこちらを向いた。
目が合ったと思う。
ぞわりと背筋が凍るのを感じた。



「…ぃ、おい、レッド!おい!!」

バッと意識が急に戻った。
目を開けると、やはりそこは病室で、グリーンとリーフ、そしていつのまにマサラから来たのか、母さんが心配した様子でボクの顔を覗き込んできた。

「レッド…。よかった、目覚めたんだな。すげーうなされてたぜ」
「あ…、うん。ありがとう」
「嫌な夢でも見たのか?」
「ちょっと。でも、別に平気」

心配してくれているグリーンをよそに、ボクの意識は先ほどみた夢の女性へと向く。
なんだったんだろう、後味の悪い、嫌な気分だった。
あいつだったのかもしれない、あのお札の下の顔は、さっきの女だったのかもしれない。
そう思うと、急に吐気がこみ上げてくる。
振り向いた女性のあの顔は、憎しみに満ちていた。
なんで、どうしてボクがその憎しみを向けられなきゃならないんだ。

「どんな夢をみたの…?」

色々考えていたら、リーフが尋ねてきた。
声はわずかに震えていて、小さい。
遠慮がち、というよりも、怯えているといった方が正確な声だった。

「かごめの夢だよ。小さいころに、よくやった。何人かで鬼を囲んで、後ろの人を当てるやつ」

歌えばすぐに伝わったんだろうが、どうにも歌う気にならずそう伝える。
自分でも思っていた以上に参っているのか、ぶっきらぼうな口調になった。

「そっか…。うん。そうなんだ」

リーフはそう呟くと、うつむいた。
なんだかそのどっちつかずな態度にイライラする。
なんだ、聞いておいてそれで終わりかよ。
理不尽な怒りなのは自分でも分かっていたが、どうしてもその時は抑えられなかった。

「ごめん、ちょっと一人になりたいんだ。出てってくれ」
「でも、レッドくん」
「いいから」

少し強めにそう断言すれば、3人はいそいそと部屋を後にした。
一瞬、あいつが来るんじゃないかという考えもよぎったが、ここのところさっきの夢以外であいつは現れていなかったし、根拠もなく大丈夫だと思った。
それよりも今は、心配してボクのために奔走してくれているグリーンやリーフ、母さんたちに当たり散らす自分に腹が立っていた。
その日は、結局あいつが現実にも夢にも現れることはなく、眠りについた。


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