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※この話は某有名掲示板の話しを元に創作したもので、一部引用も含みます
  元ネタURLは解説の方に記載してます


------------ キリトリ ------------



それは、なんとなくだった。
特に興味も何もない、たまたまバスの向かいの女の子たちが楽しそうに話していただけのこと。

―鏡の前でお辞儀をして、カゴメさまおいでくださいって唱えるの。そのまま右を向いたら、カゴメさまが来て呪われちゃうんだって―

それがなぜか、嫌に耳についた。
さらにその子は本当にそれをした人がね…と話しを続ける。
きゃー、怖いー、と騒ぐ少女たちの様子から、そのカゴメさまなるものがオカルト的なものだというのは分かった。
幽霊なんてあほらしい、そう思いながらもボクの耳は彼女たちの会話を拾う。
発端はなんだったのか、度胸試しでもしよう、そういった話の流れだったのだろう。

ふと、グリーンの顔が頭に浮かんだ。

アイツなら、この話に乗ってきそうだな。
俺様に怖いものなんかねえ、そんなことを言って試しそうだ。
そう強がりながら、実は怖がって表情を固めている幼馴染の様子が用意に想像できる。
最近あまりかまってやれてなかったから、久しぶりにからかうのも楽しいかもしれない。
あぁ、それならリーフも呼ぼう。
彼女は怖がりだから、必死になって止めるだろう。
そんな彼女を見て、余計に強がるグリーンはさぞ面白いことだろう。

「―次は、トキワシティ。お降りの方はボタンを押してください―」

バスの中にアナウンスが響く。
ボクは乗車ボタンを押して、ゆっくりとキャップを被りなおした。
たまにはバスでの移動も悪くない。








「よお、レッド!久しぶりだな!」

トキワシティのジムに入ると、早速グリーンに出迎えられた。
相変わらず偉そうな態度だが、元気だというのは伝わったので少し安心する。

「今日も挑戦者いないの?経営下手なんじゃない、グリーン」
「だから!それはオレ様の腕が最強って広まってるから、ほとんどのトレーナーが1番最後にこのジムに挑戦するせいだっての!」
「はいはい、それが経営下手っていうんだよ」

絡んでくる幼馴染を軽くあしらって、ジムリーダーの控室へと向かう。
しばらくここへは足を運んでいなかったが、たぶんいつも通りそこにいるだろう。
グリーンもボクの向かう先が分かっているのか、ほかのジムトレーナーに目配せしながら黙って後ろを付いて来ている。


控室につき、ガチャリと遠慮なく扉を開ける。
案の定そこにいた目的の人物は、きょとんとボクを見る。
左手にはサンドウィッチ。
昼食には少し遅い時間だし、つまみぐいだろうか。

「あれ、レッドくん…?」
「ひさしぶり、リーフ」
「え、え、いつ帰ってきたの?え、すごい、本物?」

わけがわかってないのか、頭にはてなを浮かべてボクを見る。
てか幼馴染に向かって本物?ってなに、さすがに失礼じゃない?
そんなボクの心境など無視して、はしゃいだ様子でぺたぺたとボクのほっぺたを触る。
左手に持ったサンドウィッチの中身がいまにも落ちそうで、正直そっちにはらはらする。

「うわぁ、何回グリーンくんがレッドくんとこいっても戻って来なかったから、まだしばらく会えないと思ってたのにー!元気してた?あ、そういえばピカチュウとかみんなはっ?」

リーフのテンションは留まるところを知らないのか。
尚も収まる傾向を見せない彼女にどう対処していいかわからないまま、ごめんと心の中で呟いてピカチュウを外に出す。

「ピッカ!」
「ピカチュウ―!ひさしぶりっ!」

リーフの意識がボクからピカチュウへと向く。
愛でられることに慣れているのか、頭やしっぽを撫でられてむしろ嬉しそうな声をあげるピカチュウ。
あんなに無遠慮にべたべたと触られているのに文句ひとつ言わないなんて、大人だな、ピカチュウ。

「おいリーフ、いい加減にしろ」

そんな矢先、存在が完全に抹消されていたグリーンが口をはさむ。
グリーンの声にピクリを反応したリーフは、ギギギとでも効果音がつくかのように顔をこちらに向けた。

「グリーンくん…」

何を思ったのか、はっとした表情を浮かべて慌てた様子で左手に持っていたサンドウィッチを自分の体の後ろに隠す。
あぁ、それグリーンのサンドウィッチだったの。

「いやがっつり見てたし、隠すのおせえし」
「ま、まだ間に合うかなあ、と」
「ふぅん?」
「す、すみません…」

さきほどのハイテンションはなんだったのか、一変して反省モードに入るリーフ。
だが、そんなのはいま、ボクにとってはどうでもいい。

「それで、せっかくの夏だし怖い話でもどうかと思って」
「何がそれで?いまの会話の流れ聞いてた?いまオレのサンドウィッチについて話してんだけど」
「さっきバスの中で聞いた話なんだけどね」
「聞けよ!無視か!」

隣でわーわーと喚くグリーンを無視して話をすすめる。
グリーンもボクのこんな態度には慣れているのか、すぐに諦めて口をつぐんだ。

「かごめさまって、知ってる?」









ほんと、今にして思えば、なんであんなことしちゃったんだろうって、すごく反省してるんだ。

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