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※この話は某有名掲示板の話しを元に創作したもので、一部引用も含みます
  元ネタURLは解説の方に記載してます


------------ キリトリ ------------




ボクはどうすればいいのか分からなくなった。
アイツは絶対に悪霊とかタチの悪いヤツだと決めつけてたから。
先生にお祓いしてもらえばそれで終ると思ってた。
それなのに、先生がアイツを庇うように話すことに、混乱していた。

「さて、それじゃあ今度は何とかしないといけないですね。レッドくん、時間かかりますが、何とかしてあげます」

この一言には本当に救われたよ。あぁ、もういいんだ。終るんだって思った。やっと安心したんだ。

先生に教えられたことを書く。ボクにとって一生忘れられない言葉。

「見た目が怖くても、自分が知らないものでも、自分と同じように苦しんでると思いなさい。救いの手を差し伸べてくれるのを待っていると思いなさい」

先生はお経をあげ始めた。お祓いのためじゃ無く、アイツが成仏出来るように。
その晩、額は裂けてたし、よくよく見れば首の痕が大きく破けて痛かったけど、本当にぐっすり眠れた。

翌日、朝早く起きたつもりが、先生はすでに朝のお祈りを終らしてた。

「おはようございます、レッドくん。さ、顔洗って朝御飯食べて来てください。食べ終わったら本山に向かいますよ」

関係者でも何でもないんで、あまり書くのはどうかと思うが少しだけ。
先生が属している宗派は、前にも書いた通り教科書に載るくらい歴史があって、信者の方も修行されてる方も全国にいるらしい。
地理的な問題からカントーとジョウトの間に本山があるんだって。
ボクが連れていってもらったその本山の名前は「シロガネ山」と呼ばれる山。
寺や生活する場所は、この山のふもとにあって、上に登ると吹雪らしい。
野生のポケモンたちもいるらしいけれど、そこではアイツみたいなのの力がここよりも極端に弱まるから、ポケモンたちが被害を受けることはないらしい。
まぁ、住むには厳しい環境らしいから、必然的に野生のポケモンも強くなるらしいから、ボクには丁度よかったかもしれない。
本山に暫くお世話になって、自分が元々持っている徳(未だにどんなものか説明できないけど)を高める事と、アイツが少しでも早く成仏出来るように、本山で供養してあげられるためって先生は言ってた。
その話を聞いて一番喜んだのがリーフ。まだ信じられなそうだったのがグリーン。
最後は、ボクが「もう大丈夫。行ってくる」って言ったから反対しなかったけど。
小さい頃リーフもここでお世話になっていたことがあったらしく、本山へ着くまで、リーフが付き添ってくれることになった。

そこでは会う人会う人にとても丁寧に挨拶された。
リーフに付いて、本堂の横奥にある小屋(小屋って呼ぶのが憚れるほど広くて立派だったが)で本山の方々にご挨拶。
ここでも先生にはかなりの低姿勢だったな。
先生、実は凄い人らしく、望めばかなりの地位にいても不思議じゃないんだって後から聞いた。
(「寂しいけど序列ができてしまうのです」って先生は言ってた)
リーフとは挨拶や生活の決まりなんかを教えてもらってからわかれた。
ボクは本山に暫く厄介になり、まぁ客人扱いではあったけど、皆と同じような生活をした。
多分、先生の言葉添えがあったからだろうけど。

その中で、自分が本当に幸運なんだなって実感したよ。
もう四十年間ずっと蛇の怨霊に苦しめられている女性や、
家族親族まで祟りで没落してしまって、ポケモンたちも失い、身寄りが無くなってしまったけど、家系を辿ればすごく有名なトレーナーの人とか…
ボクなんかよりよっぽど辛い思いしてる人が、こんなにいるなんて知らなかったから…。

厳しい生活の中にいたからなのか、場所がそうだからなのか、あるいは先生の話があったからなのか恐怖は大分薄れた。
とは言うものの、ふと瞬間にアイツがそばに来てる気がしてかなり怯えたけど。

本山に預けてもらって一ヶ月経った頃、先生が来た。

「おやおや、随分良くなったようですね」
「うん、先生のおかげ」
「あれから見えたりしましたか?」
「いや…一回も。多分成仏したかどっかにいったんじゃないな。ここ、本山だし」
「そんな事はありませんよ?」

顔がひきつった。

「あぁ、すみません。また怖くなってしまいますね。でもねレッドくん、ここには沢山の苦しんでる人がいらっしゃいます。その人達を少しでも多く助けてあげるのが、私達の仕事なのですよ」

多分だけど、先生の言葉にはアイツも含まれてたんだと思う。

「レッドくん、もう少しここにいて勉強しなさい。折角なんですから」

ボクは先生の言葉に従った。
あの時の事がまだまだ尾を引いていて、まだここにいたいって思ってたから。
それに、一日はあっという間なんだけど…何て言うか、時間がゆっくり流れてような感じが好きだったな。(何か矛盾してるけど)
そんなのが続いて、結局三ヶ月も居座ってしまった。
その間先生は、こっちには顔を出さなかった。(二ヶ月前に来たきり)
やっぱり先生の言葉がないと不安だった。
その分リーフや、許可をもらってグリーンも毎日のように顔を出してくれた。
ピカチュウたちもすっかり体調は回復しようで、シロガネ山でなら大丈夫だ、という先生の許可のもと一緒に過ごすことも出来た。
バトルしたり、トレーニングしたりして、そこそこ充実した生活を送っていたと思う。
もともとボクは、それ以外にあまり興味がなかったし。
でも、哀しいかな、流石に三ヶ月もそれまで自分がいた騒々しい世界から隔離されると、物足りない気持ちが強くなってた。
強い相手とバトルがしたい。
その思いは、だんだんと抑えきれなくなってきていた。

実に二ヶ月ぶりに先生がやって来て、やっと本山での生活は終りを迎えようとしていた。
身支度を整え、兎に角お世話になった皆さんに一人ずつ御礼を言い、先生と帰ろうとしたんだ。
でも気付くと、横にいたはずの先生がいない。
あれ?と思って振り向いたら、少し後にいたんだ。
歩くの速すぎたかな?って思って戻ったら、
優しい顔で「レッドくん、帰るのやめてここに居たらどうですか?」って言われた。
実は先生に認められた気がして少し嬉しかった。

「いや、ボクにはここの人達みたいには出来ないです。本当に皆さん凄いと思います。真似出来そうもないですよ」

照れながら答えたら、

「そうじゃなくて、帰っちゃ駄目みたいなんです」
「え?」
「だってまだ残ってるから」

また顔がひきつった。

結局、本山を降りる事が出来たのは、それから二ヶ月後だった。実に五ヶ月も居座ってしまった。
多分、こんなに長く、家族でも無い誰かに生活の面倒を見てもらう事は、この先ないだろう。
先生から、「多分もう大丈夫だと思うけど、しばらくの間は月に一度おいでなさい」と言われた。
アイツが消えたのか、それとも隠れてれのか、本当のところは分からないからだそうだ。
リーフがそばで見ていてくれるから、危なくなったらすぐにわかるだろうけれど…。
不安は残るようだった。


長かった本山の生活も終って、やっとマサラに戻って来た。
実家に戻り、実に約半年ぶりくらいにトキワに行った。
グリーンをからかうために。
しかし実際に行ってみたらグリーンはいなかった。
ジムトレ(ヤスなんとかって人だった気がする)に聞いたら、トキワのポケセンだという。
ここ数カ月、ずっと通い詰めているらしい。
ボクの話しはグリーンから聞いていたようで、彼らも色々と手を尽くしてくれたらしい。
少し談笑して、お礼を言った後、ボクはそのままポケセンへと向かった。

グリーンはすぐに見つかった。一緒にリーフも。
2人はボクを見るなり満面の笑みで抱きついてきた。

「おかえりレッド!」
「うん。ただいま」

それから場所をグリーンの新しいマンションに移した。
部屋に入る前に「絶対変なことすんなよ!次は敷金礼金お前からもらうからな!」と言われた。
心配するのそこかよ、と思ったけれど経営不振のジムリーダーには大切な問題らしい。
しばらく楽しく話していた後、話しは自然にこれからのことになった。

しばらくはマサラで日常生活を満喫して、いろんなポケモンの育成をしてみようと思う。
落ち着いたらまだ見たことないポケモンを求めて、また旅に出ようと考えてる。
そう伝えると、「その歳で隠居生活かよ」と突っ込まれたけれど、ポケモンの育成やバトルに関わっていることが、ボクにとって1番のよりどころ何だとこの数カ月で実感していたから気にしなかった。
どこかのジムリーダーと違って、諸事情(某R団事件)でお金はたんまりあるからね。
グリーンもリーフも、笑いながら賛成してくれた。


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