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温暖化現象


ポケモンセンターから出ると、予想以上の空気の冷たさに体を縮めた。
さむい、さむすぎる。

「どうした?急に黙って」
「寒くて口をあけたくないの」
「プッ。あほだろ」
「うるさい。うー…、さむいよう」
「もう2月だからな」
「おっかしいなあ。地球温暖化って聞いてたのに。あーさむい!!」
「何回言っても気温は変わんないぜ」
「でも声出したら、体感温度が上がってあったまるもんきっと!」
「うわあ、えらーい。よくかんがえられまちたねー」

わざとらしい赤ちゃん言葉。
小馬鹿にした声が耳元に響く。

「むぅ…。ちょっとグリーン?バカにしてるでしょ」
「バカになんてしてねーって。残念ながらデフォルトでこの対応です」
何がデフォルトよ、このすけこまし。
「……他の女の子には優しいくせに」
「へ?何て?」
「なんでもないですバカグリーン」
「いや、本当に聞こえなかったんだって。何て?」
「知らなーい」
「おい、拗ねんな」
「拗ねてないですー」
「じゃあ、何て言ったんだよ」
「教えない」
「教えろよ!気になるだろ!」
「気にしてればいいじゃん」
「…はぁ、めんどくせ」

その言葉にまたムッとする。
他の女の子にはめんどくさいだなんて、絶対に言わないじゃない。
なのに、どうしてわたしには…

「まあいいや。そういや今日、すげーかわいい女が挑戦に来たんだけどよ。なんか俺にあこがれてポケモン始めたらしいんだよ。たまんないよなあ、こういうの」
「あっそ」
「でさあ、バトル終わった後も一緒に食事してくださいってしつこくてさー。かっこよすぎるのも、罪だよなあ」
「ふーん」

…あ、もうすぐシロガネ山とトキワシティをつなぐゲートだ。
さむいなあ。
はやくあったかいところへ行きたい。
そしてあったかいスープを飲みたい。

聞きたくないグリーンのセリフの聞き流すべく、違うことを考えてみる。
けれど、どうやら好きな人の声というのは、内容に関わらず勝手に耳が拾ってしまうらしい。
聞いてしまったその言葉に、おのずと早まる歩く速度。

「おい、さっきからノリ悪いぞ」
「……さむいから」
「声出したらあったかくなるんじゃないんですかー」
「………」
「おーい」
「………」
「…ったく、なんか反応しろよー」
「………」
「ナナシちゃーん?」
「…グリーンが、」
「へ?」
「……グリーンが、悪いの」
「え?いやいやいやいや、はい?急になんだ、どうした」
「あたしと話してるのに他の女の子のこと話すのが悪いんだから!」
「え…、ちょ、それどういう、」
「グリーンのどんかん!たらし!!すけこまし!!!…、ふぇ、ひっく」
「うわ、泣くなって。ナナシ、ちゃん?泣くなよまじで」

グリーンの焦った声色。
それでも、なみだは止まらない。

「ないてないもん、ばかぐりーん…。ぐすん」
「明らかに泣いてるじゃねーか、ってかさっきからひどくね?」
「うぅ、ひどくない。さむい、ぐす、だけ、だもん…」
「あぁもう」

グリーンがそう言った瞬間、シロガネ山とトキワシティをつなぐゲートの扉が開いた。
そこには、特徴のあるシルエット。

「……グリーン」
「よぅ、ナナシ。おかえり」

耳にあてたままのポケギアからは、プ―プ―という機械音。
でもまぎれもなく聞こえるグリーンの声。
びっくりして止まる涙。
さっきまではやあしだった歩みは止まり、正直、今自分が置かれている状況が把握できないでいた。

「ったく。おせーんだよ」
「へ、あ…いたっ」

近づいてきたかと思うと、パチンとおでこを指ではじがれる。
まぎれもなく本物。

「俺様を待たせるなんて100万年はや、っておい泣くなってば!」
「うぅ、なんでここにいるのよぐりーん」

再びあふれだす涙に困惑しつつ、そっと優しい手つきで涙をぬぐってくれるグリーン。
そして、ゆっくりと抱きしめられる。




「ナナシが寒いっていうから、あっためにきてやったんだよ。ありがたく思えよな」


化現象


「……で、その女の子とは食事行ったの?」「はっ、お前以外の女と飯になんて行くわけねーだろ。楽しくねえし」「ふーん」「はは、顔真っ赤だぜ」「うるさい///」





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