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まもるくん


Special Contents : Side Writer

※これは作者の母校に伝わる「本当のお話し」です
七不思議の7つめ「まもるくん」の基になったものです。
これは読んだ方に、今後何かしらの影響が生じる可能性のあるお話しですので、
ご了承くださる方のみ自己責任の上でお読みください。

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これは、わたしの学校に伝わる話しなんだけどね。
わたしが通ってた学校は、4校合同になってる所で、幼稚園・小学校・中学校・高等学校が同じ敷地内にある国立の学校。
小学校と中学校は年に数回合同のチーム活動みたいなのがあるんだけど、ほとんどそれくらいで、あとは生徒会の人くらいしかお互いの学校に関わることがなかったんだよね。
なのに、当たり前のようにみんなが知っている男の子がいたの。
それが、まもるくん。
小学生くらいの、ずうっと昔の制服姿の男の子。
彼と会うときは、本当に不思議なんだけれど、一緒にいることに違和感を覚えないんだよね。
なんだろう、一緒にいるのが当たり前みたいに、「あ、まもるくんだ!」って自然に、遊んでるの。
服装にも、なんにも違和感がないの。
ただ楽しく、お話しして遊んでいるの。
この子は友達のまもるくんだって思ってるんだよね。
思ってるっていうよりも、知ってるって言ったほうがしっくりくるかなあ。
ほら、あんまり仲良くなくっても、クラスメイトの名前を覚えてるみたいな、そんな感じ。
伝わるかなぁ。

でもね、まもるくんは、別に怖いこととかするわけでもなく、ただ友達として一緒にいるだけなの。
みんなで部活してる時とかにも、いた。
そのときにもやっぱり違和感なんてなくって、同じ部員としてその場所に当然のようにいるの。
それで、いなくなった後、やっと「まもるくん来てたねー」なんて気づくの。
みんな共通して、そんな感じだった。
だから、追いかけられたとか、怖い思いをさせられたとか、そんな話しは一切聞かなかった。
全員がまもるくんと遊んだことがあるわけじゃないのに、みんな彼を知っていた。
入ったばかりの幼稚園生も、転入してきたばかりのわたしも。
誰かから聞いたとかじゃなくって、本当に、ごく自然に。
知ってた。
彼はまもるくんだって。




でね、4校入るくらいだから、学校全体の面積は莫大でね。
各校それぞれの運動場とか体育館、武道場にプールと施設もたくさんあった。
ちょっと遠くの高台から見れば、あそこからあそこまでがあの学校ってわかるくらい。
なんでそんなに広かったかって言うと、学校自体の歴史が130年を超える長いものだったから。
もともとその学校は、寺子屋みたいなものだったらしくて、年齢問わず教えていたんだって。
それが今でも、幼稚園から中学校まで教えることになった所以なんだと思う。
あ、それでね。
130年前、つまり1880年以降には大きな戦争がたくさん起こった。
日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦…ほかにもたくさん。
さっきも言ったみたいに、わたしの学校は国立運営の学校だったから、土地は国のものだったの。
当然のように学校は、避難所として、兵士の介護場所として、そして、死体を埋める場所として提供された。
女や子どもに関係なく、死体の処理もさせられてたらしい。
わたしたちは想像しか出来ないけれど、年端もいかない子どもには、なかなか残酷な生活だったと思う。





そしてたぶん、まもるくんも、その手伝いをしていたひとりだったんだと思う。
というのも、彼が来ている制服は、1890年代以降のものだったから。
歴史が古いぶん、わたしの学校には色んな資料がある。
もちろん、歴代の制服についてなんかも、ちゃんと資料として保存されてた。
知らないはずの制服なのに、たしかに資料にあるのと同じものを、まもるくんは着てた。

ありきたりな解釈だけど、きっとまもるくんは寂しかったんだと思う。
ただ一緒に遊びたいだけなんだと思う。
わたしの知ってる不思議な話は、これくらい。
みんなが知ってる、まもるくんの話し。

でもね、ひとつだけ気をつけて欲しい事があるの。
まもるくんのことを知ったら、忘れちゃいけないの。
忘れてしまったら、まもるくんは、思い出してくれるまでずっと繰り返すから。
何回も、何回も、何回も。
だからもし、まもるくんを忘れてしまっていたら。
時間切れになる前に、思い出してください。

彼は、まもるくん。
わたしの、わたしたちの、








…………………あなたのともだち。




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