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10


「ん…んぅ」
「あ、起きた」
「リーフ、大丈夫か?」

目を覚ますと、屋上へ続く躍ばに倒れていた。目の前にはレッドとグリーン。顔を覗き込みながらリーフに具合を尋ねる。

「うん、大丈夫だよ…。ここ、屋上?」
「あぁ、俺とレッドもさっきまでここで寝てたみたいでさ」
「ふぇ、なんでだっけ?」
「それが思い出せねーんだよなあ。あ、ほらアッチにヒビキたちも寝てるぜ」

グリーンに言われた方へ視線を動かせば、後輩たちが倒れている。否、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てていた。

「ひなたぼっこだっけ?」
「こんな暑い日に?」
「だよねえ…」

どうしても、なぜ自分たちがこんなところで寝ていたのか思い出せない。不思議に思いながらも、どんなに思い出そうとしても手がかりすら思い出せなかった。

「こんな所でずっと寝てたら、風邪ひくかも知れない。そろそヒビキ達を起こそうか」
「あぁ、そうだな。お前等おきろー!」

レッドとグリーンが後輩組を起こしにかかる。

「んー…、あと5分!!」
「ちょ、コトネ?…うわぁ!?」

しかし寝ぼけたコトネがグリーンの体を抑え、投げ飛ばした。ドンッという盛大な音が屋上の踊り場に響く。
呆然とする一同。グリーンが投げ飛ばされた音で、ヒビキとシルバーも何事だと飛び起きた。投げ飛ばされた当の本人は、状況が飲み込めないらしく、むくりと起き上がってパチパチと目をしばたかせた。

「……え?」
「プッ…ククク」

キョトン、とするグリーンを見て、レッドが堪えきれず笑い出す。それにつられ、リーフ達にも笑顔が溢れた。

「んぅ〜、…あれ?先輩たちどうしたんですか?」
「ックク、いやなんでもない。コトネ、最高」
「へ?」
「おいコラ、コトネ!お前覚悟は出来てんだろうな?」
「え、突然なんですかグリーン先輩っ」
「ヒビキ!シルバー!お前等もこっそり笑ってんじゃねえ!」
「あ、いやすみませんっ。でも…ハハッ」
「よぉし、お前等3人まとめてお仕置きだ!」
「ぎゃー!グリーン先輩がキレたー!!」

笑い声が響き、せまい踊り場で5人がグリーンから逃げ回る。いつもの光景だ。

「…あれ?リーフ先輩」
「ん?」

するとそんな中、突然コトネが逃げる足を止めリーフに声をかけた。釣られてリーフも足を止める。すぐに追いついたグリーンがコトネとリーフをガシッとつかんだが、気にする様子はない。

「右足、どうかしたんですか?」
「え?…あれ?わたしなんで包帯なんか巻いてるんだろ」
「うわ、本当だ。しかもかなり頑丈に固定してあんじゃん。何、お前またコケたの?」
「コケてないよ失礼な!ってかまたってやめてよ」
「リーフすぐコケるもんね」
「レッドもうるさい!」
「…でも身に覚えないんですか?」
「う、うん…。痛くも痒くもないよ」

リーフの不安そうな反応を見て、彼女の言うことが本当だと悟ったグリーンが、そっとしゃがんで包帯を解く。

「なーんてな!俺が寝てる間にイタズラしたんだよ!なあレッド?」
「うん、そんなに怖がるとは思ってなかったから。ごめん」
「なあんだ、もう!びっくりしちゃった」

そういってレッドとグリーンの嘘に何の疑問も持たず信じきるリーフの隣で、レッドとグリーンが眉をひそめる。
彼女の足に包帯を巻きつけたのは彼らではない。リーフを怖がらせないために、瞬時に目配せをしあってついた嘘だ。

スッキリとしない、もやもやした気分のまま、結局その日は、レッドとグリーンの計らいで、解散することになった。





*



次の日の放課後。
窓の外では梅が芽吹き、青い空に映えていた。そんな春の訪れを話題に、「明日から3月だね」などと話ながら帰宅準備をしていたレッド、グリーン、リーフ。
そんな3人の教室に、いつの間にか入ってきたヒビキとコトネの声が響く……


「うちの学校の七不思議、興味ありませんかっ?」



7つめ、もういっかい。





「もういっかい。完」


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