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ピピピピピピピピピピピピピ…………

「ん…」
「うー…」

機会的な目覚まし音に目を覚ます。
えっと、お風呂に入って映画を見て雑談して…。

「っ!」

はっとして体を起き上がらせて時間を確認すると、すでに時刻は午前2時。
どうやらリーフの携帯アラームが鳴ったらしかった。
リーフは普段ぽけっとしてるくせに、こういうところだけは真面目だ。
ふああ、とあくびをしてアラームを切る。
それにしても、眠い。

のどが渇いたので水をとりに行く。
あと1時間だし、グリーンたちも起こしておくか。
2人の分も水を組んで、うたたねしていたリビングに戻る。

「グリーン、リーフ、起きて」
「んあ…?」
「2時になった」

まだ寝ぼけ眼のリーフと、僕の声など無視してこんこんと眠り続けるグリーン。
とりあえずリーフに水を渡し出す。
もちろんグリーンの分は、彼の頭にかけておいた。

「うわっ!?」

水をかぶると同時、素頓狂な声をあげて飛び起きるグリーン。

「おはようグリーン」
「…おはようじゃねえ!何すんだレッド!」
「起こしても起きないから」
「もっと他に方法があるだろ!」

グリーンが何か喚いているけど無視することにした。

「…それで、あと1時間を切ったけどどうする?」
「どうするもこうするも、頑張るよ!」
「めずらしく意気揚々としてんな」
「だって、気になるんだもん」

るん、とごきげんにそう答えたリーフ。
普段怖がりの彼女がこうも積極的になるのも珍しい。

「んじゃ、最終チェックだな。人形、包丁、塩水…」
「ねえ、僕はひとあし先にポケモンたちとマンションのロビーで待ってる。どうせすることないし」
「え、でも…」
「降りたらグループ通話で電話かけるよ。かくれんぼ中に電話やチャットはNGって書き込みもなかったし、お互いどういう状況か実況して。僕はふたりを待ってる間、もう少し詳しく調べておく」
「了解。じゃあ、俺とリーフはそれぞれ手順を確認しとく。15分前になったら連絡するぜ」
「うん。…あ、そうだポケモン」
「あ、そうだった。ほら、コイツらのことよろしく頼むぜ」
「お願いね、レッドくん」

はい、とグリーンとリーフからボールのついたベルトを渡される。
時間はたっぷりあることだし、毛づくろいでもしておくか。

「それじゃ、がんばってね。リーフ、くれぐれも手順間違えないで」
「もう、レッドくんたら」
「心配なんだよ、リーフそそっかしいし。塩水はちゃんと、ペットボトルとかこぼれても平気なのにしとくんだよ」
「はぁい」

のんきに間を伸ばして返事するリーフがさらに心配になるが、グリーンもついているしいざとなれば僕が駆けつける。
大丈夫だろう。



実は僕は昔、ユウレイを見たことがある。
ロケット団に殺されたガラガラだ。
彼女の霊魂がどのようなものであったかは別として、ユウレイはこの世界に実在する。
それは事実だ。
油断しては、行けない。


ロビーでポケモンたちの毛づくろいなどをして遊ぶこと20分。
ポケギアが鳴った。
着信はグリーン、見れば予定通り2時45分だ。
律儀なやつ。

『もしもし』
「おう、レッド、俺たちは準備できたぜ」
『ん。じゃあ少し早いけど始めようか。他の文献見てたけど、3時過ぎからがだいぶ超常現象が起こりやすいだけで、時間に縛りは無いみたいだし』
「りょーかい、あー緊張するぜ」
『うん』
「嘘つけ、お前普段と全く声のトーンが変わってねえぞ」
『僕はいつもこのトーン。…そういえば、リーフの声が聞こえないけど』
「あ、わたしちゃんといるよっ」
『くれぐれも無理しないで』
「はぁーい」
「…んじゃ、始めるか」

グリーンがそういった瞬間、心配したのかボールから彼のピジョットが出てきた。
心配そうに僕のポゲギアを覗きこむ。
大丈夫だという意味を込めて彼の頭を撫でれば、おとなしく身をまかせてくれた。

「うん…」
「いくぜ?…お前の名前は じゃがりこ だ」
「あなたの名前は かぷりこ だよ」

…スナック菓子の名前。
普段ポケモンたちにニックネームを付けない2人が、ぬいぐるみにどんな名前をつけるのか気になってたけど。
まあ、いいか。

「最初はグリーンが鬼、最初はグリーンが鬼、最初はグリーンが鬼』」
「最初はリーフが鬼、最初はリーフが鬼、最初はリーフが鬼』」

おそらく、人形に向かって真剣に名前をつけているであろう2人の姿を想像すると少しおもしろいが、不謹慎なので抑える。
そんな僕の心境など知るよしもないグリーンとリーフは、そのままかくれんぼを続けていたらしい。
物音とともに、バチャンという水音が電話越しに聞こえた。

「よし、沈めた。電気消すぜ、リーフ」
「うん」
『2人とも慎重にね』



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