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「ま、おにごっこはともかく、かくれんぼだ。とりあえずリーフと俺で同時にするとして…。1人1人別々にするか?それとも1つのかくれんぼを最初の鬼役と終了役で分けるか、どっちがいい?」
「最初の鬼って刃物でぬいぐるみを切るんでしょ。ちゃんと本人の方が終了させた方がいいんじゃない?」
「たしかに、終了手順を変えてる事例って良くないこと起こってるのが多いし…」
「じゃあ別々にするかくれんぼを同じ家で、だな。それぞれが隠れる場所は別のところがいいよな?」
「んー、でもグリーンの家のリビングに2人も隠れられる場所ないよ」
「あ、俺ん家でするのは決定なんだ…」
「押入れの上と下とか?」
「男の一人暮らしの辛いところだね」
「ひとの家勝手に降霊術の場所に決めといてずいぶんな言い草だな」

何か言ってるグリーンを無視して彼の部屋の間取りを思い浮かべる。
トキワにある2LDKの彼のマンションは、8畳のダイニングの奥に2つの小部屋を構えている。
シロガネ山から僕が遊びに来た時用の部屋と、グリーンの部屋だ。
この3部屋のうち、テレビが構えてあるのはダイニングのみ。
そのダイニングも半分はカウンターキッチンに費やされている。
あとは風呂・トイレ・エントランスが別に作られているシンプルな部屋割りだ。
同じ場所にふたりで隠れるのか、それとも分けるのか。

「…レッドの部屋のクローゼットと俺の部屋のクローゼットでそれぞれ分かれたらよくね?」
「たしかに、同じ家という範囲なんだからありかも」
「鍵かけなきゃ大丈夫だろ」

なんだかんだ言って、グリーンのりのりじゃん。
というのは拗ねるので口にはしない。

「ならとりあえず、グリーンの家行ってぬいぐるみの準備しないと」
「あ、ぬいぐるみの準備も俺の家ですんの決定してるんだ」
「でもグリーンくんの家にぬいぐるみ縫う裁縫セットとかあるの?」
「何言ってんだ、裁縫セットくらいあるに決まってるだろ」
「グリーンってお母さんキャラだから」
「おいレッドしばくぞ’」
「じゃあグリーンくん家へレッツゴー!」
「ったく。…あ」
「何」
「米とぬいぐるみがねえ」
「…………」

そういえば、グリーンって自炊全くしないんだった。

結局そのあと、手頃なぬいぐるみをデパートへと買いに行った。
米はリーフの家から持ってくることにして、僕たちは綿を取り出す作業にとりかかった。
もちろんグリーンの家で。

「わりと簡単に出来るもんなんだな」

作業は1時間ほどで終了した。
赤い糸をぐるぐると巻きつけられたぬいぐるみはどこか生々しいものがある。

「なんか、可哀相だね」
「リーフ、そういう感情って霊とか呼び寄せやすいらしいからあんまり思わない方がいい」
「そ、そっか」
「まあ何にせよ、あとは午前3時になるのを待つだけだな」
「うん。その間にもういっかい手順の確認をしよう。まず、グリーンとリーフそれぞれが、別々のぬいぐるみに名前をつけて、水に沈める。2人とも刃物を持ってウロウロ、そして刃物でぬいぐるみを刺す。そして塩水をおいている場所に隠れる。グリーンはグリーンの部屋のクローゼット、リーフは僕の部屋のクローゼット。あとは3人でチャット形式で実況しながら、4時になったらリーフ、グリーンの順番にかくれんぼを終了させて、3人でそのぬいぐるみを焼く。間違いない?」
「あぁ。テレビは最初からつけてていいか。その間レッドはどうしとく?」
「グリーンとリーフのポケモンたちと一緒に、マンションのロビーで待ってるよ。何かあったらすぐに駆けつける」
「サンキュ。でも頼むから眠るなよな」
「グリーンこそ。途中で寝ちゃって呪われた、なんてことになっても知らない」
「そっかあ、そのこと考えてなかったや。2人とも、わたしが寝ちゃったらたたき起こしてね」
「降霊術中に寝るってのも、かなりの神経だけどな」
「でもリーフならありえる」

もう、と頬をふくらませるリーフの頭をぽんぽんと撫でる。
自分が提案した企画だからといって、怖がりなことには変わりない。
変なパニックに陥らないように、支えてあげなくちゃ。

「てか、まだ6時か。だいぶ時間余ったな」
「なんなら暇つぶしがてら、この人形いくつか作っとく?お守り代わりに」
「お守りって、これお守りになんねえだろ」
「というより、身代わりかな。生米と爪を入れた藁人形とかを自分の身代わりにして降霊術を行っている例なんてたくさんあるし」
「へえ、そうなんだ。知らなかった」
「このひとりかくれんぼも、そこから派生しだしたものだと思う」
「お前ってほんと、変なことばっか知ってるよな」

変なことって失礼な。
そう思ったけれど、相手にするのは面倒なので流すことにする。

「でもぬいぐるみが無いよ??」
「こないだグリーンと僕とでクレーンゲーム勝負したとき取ったやつがたくさんある。ちょっと小さいけど、使えると思う」
「あぁ、アレな。使いドコロなかったし、どうせ暇だしやってみっか」
「そうだね。実はわたし、ちょっとこういう細かい作業好きなんだあ」

グリーンとリーフも同意してくれる。
さっきまで可哀相なんて言ってたのはどこへやら。

そこから僕たちはさらに5個の人形を作った。
といっても、ネイルをこれ以上取りたくないというリーフの主張を重んじて、爪は僕とグリーンから進呈された。

「…にしても腹減ったな。とりあえずみんなで飯食って、降霊術中に寝ちまわないように少し早い就寝にするか?」
「え、もうそんな時間?」
「もうすぐ8時。雑談しながら作業してたから、4時間近く使っちゃったみたい」
「どうりでお腹空いてるはずだね!」
「やっぱ夏なだけあって、日が沈むの遅いしな」
「私、ごはんの準備してくるね。ありあわせでいい?」
「うん」
「じゃあリーフが飯作ってくれてる間に、俺達はもうちょっとひとりかくれんぼについて調べてみるか」

リーフが教えてくれた2chのページの他にも、まとめサイトや検証サイトの掲示板を手当たりしだい探った。
個人がリアルタイムで書き込んでいるだけあって臨場感がある。
なるほど、リーフがはまってしまったのもなんとなくわかる気がする。

「はい、ごはんできたよー」
「お、うまそー!」
「リーフのハンバーグ好き」
「ヘヘ、ありがとう!」

出てきたのは手作りハンバーグ。
僕のには和風のソース、グリーンはデミグラスソーズと、それぞれの好きな味が添えられている。

「腹減った!いただきます!」
「はい、召し上がれ。おかわりもあるからね」
「おう!」

うん、美味しい。
彼女の作るごはんはどれも大好きだけど、とくにハンバーグは絶品だ。

「…はー、食った食った」

ぽん、と膨らんだお腹を満足気に叩きながら、グリーンが横になる。

「グリーンおやじくさい」
「うるせー」
「あはは、食べてすぐに寝っ転がったら太っちゃうよ」

チラリ、と時計と見ればもうすぐ8時。
まだ時間は十分にある。

「リーフ、グリーン、一息ついたら1回風呂に入って仮眠を取ろう。さっきの話しじゃないけど、降霊術中に寝たりなんてしたら洒落にならないよ」
「あ、はぁい」

僕の言葉に反応したリーフは、ぱたぱたとキッチンへ食器を片付けに行った。
横目でグリーンを見れば、カビゴンの用にお腹をふくらませて寝ている、これは当分動かないな。

「先に僕、お風呂入ってくるね」
「はあーい」
「なあ、全員風呂上がったら映画見ようぜ!」




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