「霊術院の頃は、まだ乙子は自分の斬魄刀と、自分に起こるすべてを知らなかっただけ。せやから、あたしは乙子が悪いなんてこれっぽっちも思ってへん。そもそも、乙子を虐める奴らが悪い。男のくせして情けないっちゅーねん。
 …乙子に唯一悪いところがあるとするなら、きっと六年間の間に感じたどうしようもない恐怖とか不安とか、寂しさとか悲しさとか、そういうものを全部まるめて捨ててしもたところ。怖いと思うことはべつに悪いことやないのに、耐えられなくなった乙子はそれを捨てて、その記憶もどこかの誰かに飛び散って、消えて無くなった」
「――じゃあ、いるんだね。彼女に関わって、致命的な記憶を失くして廃人になった子達は」
「ずっと昔の話や。今更掘り返して、乙子をどうするつもりなん」
「どうもしないよ、そんな怖い顔しないで。リサちゃんは友達思いだねぇ」
「……」
「ただちょっと、気になるところがあって。でもボクの考えすぎだったみたいだ」
「……今は多分、へこんどるよ」
「だぁいじょうぶ、ボクそういう気遣いはバッチリだから」
「…」
「いたたた、腕抓んないで」

本当のこと




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