パン100tも食えるわけないだろ

「シリウス…君、今日みょうじと喋っただろ」
「あ?…あー、あいつが教科書落としたから拾ったけど、それが?」
「何で拾ったんだよ!」
「ひぇっ」

普段温厚で滅多に声を荒げることのないリーマスが机に力一杯拳を叩きつけた。
その音でジェームズも俺も思わず飛び上がってしまった。
完全に目がマジになってる。怖い。

「見ただろあのはにかんだ笑顔!あぁ可愛いったらありゃしない!!黙っていても可愛いのにあれ以上可愛くなってどうするつもりなんだろうね!!」
「な、何怒ってんだよ…」
「そうさ!!僕は今猛烈に怒ってる!!君とみょうじ、両方に!!」

頭をベッドに打ち付け始めたリーマスを見て、ジェームズは顔を覆った。正直俺も目を逸らしたい。て言うか逃げたい。
リーマスは、みょうじという女子に恋をしてから薬でも盛られたんじゃないかというくらいにみょうじにベタ惚れなのだ。

「みょうじの笑いかけた相手が僕だったらそれだけでパン100トンは食べられるね!!」
「ほ、他にもなんかあんだろ…俺、応援してるからさ…」
「だってみょうじ、君のこと見たんだよ!?」
「お、おう」
「見たんだよ!?あのレモンキャンディーみたいな大きな目で君のこと見たんだよシリウス!!」
「お、おう…」
「それだけで君を殴る十分な理由になるんだよ!?」
「ジェームズ助けろ!!!」
「僕の手には負えないよ…」

リーマスの執心ぶりは俺達なら嫌というほど知っているが、みょうじはこれまた驚くほど鈍感で、リーマスの一方的な愛に気付きやしない。
早くくっついてくれないとこっちの身が持たないって言うのによ。

「…はぁああああぁぁ……」
「…どうしたんだよ急に」
「いや、みょうじは天使だなって」
「…あ、そ…」

マジで誰か助けろ。リーマスとみょうじくっつけろ。
エバンズとジェームズだけならまだしもリーマスのは最早病気レベルだからな?
授業中もずっとみょうじのこと見てるの知ってるんだからな?
何でここなら簡単に愛してるって言えるのに本人を前にすると黙るんだよ!!

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