早く気付け馬鹿

「あのね、エルセン君がお嫁にほしい」
「……えっ」
「エルセン君がお嫁に」
「あ、あの、なにがどうなってそうなったんですか…!?」

プラスチックの海を眺めながらぽつり、と呟くと律儀なエルセン君はおろおろと反応してくれる。可愛い。

「最初はね、お婿さんかなぁって思ったんだよ」
「は、はい…」
「エルセン君何でも真剣にやってるし、いい子だし、素直だし、ちょっと臆病だけどそれって慎重ってことでしょ?」
「…はぁ」
「浮気もしなさそうだし、料理も上手そうだし、家庭的っぽいし」
「…」
「そしたらなんか、お婿さんってよりはお嫁さんだなぁと思いまして」
「…」
「これは私がお婿さんになるしかないと思いまして」
「も、…もうやめてください…!」

エルセン君は顔を両手で覆って膝の間に顔を埋めてしまった。
大丈夫かな、バーントになったら流石に逃げないと私もやばい。

「…た、…確かに、浮気するひとは…い、いやですね…」
「だよねぇ」
「そ、そういうことを考えるなら、…優しいひとが、いいなぁ…」
「だからね、お嫁さんにほしいと」
「や、やめてください…!」

エルセン君が珍しく語気を荒げただと…!?ざわ…ざわ…。
真っ白な肌がほんのり赤くなっている。綺麗な肌だよなぁ。

「ぼ、僕だって…お、男なんですよ…!?」
「うん、知ってる」
「お嫁さんだなんて……」
「うん」
「お、お嫁さん…」
「うん」
「…」
「…」
「…」
「おい、真面目に悩むな馬鹿か」
「げっ私の可愛いエルセン君を執拗に虐める図体でかいデーダンさんだーこんにちはー」
「その暴言も今は許してやるから一発殴らせろ」
「嫌ですよ痛いもん」
「俺は心が痛ぇ」
「またまたご冗談を痛む心なんて持ってないでしょ」
「…」
「…あ、あのぅ…」

デーダンさんは無駄に高い位置から私達を見下ろす。
なんでいつもこの人前開けてるんだろうか。寒くないのか。あれか、その無駄な腹筋を自慢したいのか。
エルセン君はひょろひょろだけどモデル体型なんだぞ!

「プロレスラーはお断りだ!」
「は?」
「あっそろそろバッターさんが私が後ろからついてきてないことに気付く頃かな!ばいばいエルセン君!」
「あっ…えっ…」

あの人私が後ろから消えても暫く気付かないんだよなぁ。
今回はザッカリーに指摘されて私がいないことに気が付いたに一票。





「……あのぅ…」
「………んだよ」
「みょうじさんは…浮気しないひとが、い、いいそうですよ…?」
「…うるせぇ!!仕事戻れ!!」
「す、すいません…!!」




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エルセン君←←←主(←←←←←←←←)デーダンさん。
微妙に分かり辛い三角関係。デーダンさんに勝ち目はない。
愛故に空回りなんてレベルじゃない。

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